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【書籍】未知への挑戦ー川口淳一郎と『はやぶさ』プロジェクトの軌跡
『1日1話、読めば心が熱くなる365人の生き方の教科書』(致知出版社、2022年)のp404「12月27日:高い塔を建てなければ新しい地平線は見えない(川口淳一郎 宇宙航空研究開発機構「はやぶさ」 プロジェクトマネージャ)」を取り上げたいと思います。
小惑星探査機「はやぶさ」プロジェクトの成功は、いくつかの重要な要素が組み合わさった結果でした。まず、プロジェクトマネージャーの川口氏が掲げた「地球へのサンプルリターン」という明確な目標が、チーム全体に共有され、共通認識として深く根付いていました。これは、困難な状況下でもチームメンバー全員が同じ方向を向き、一丸となって取り組むための礎となりました。
リーダーシップも重要な役割を果たしました。川口氏は、常に目標達成を見据え、状況を客観的に分析し、適切な判断を下すことで、チームを導きました。決して楽観視することなく、常に最悪の事態を想定しながらも、最後まで諦めずにゴールを目指す姿勢は、チームメンバーに勇気と希望を与えました。
チームの力も欠かせません。コアメンバーは20名程度でしたが、それぞれが自分の役割を深く理解し、自主性と創意工夫を持って課題解決に取り組みました。全体を統括する指示はありましたが、各メンバーが主体的に行動し、互いに協力し合うことで、プロジェクトは着実に前進しました。
「はやぶさ」プロジェクトは、技術的な挑戦だけでなく、組織文化の面でも革新的な取り組みでした。従来の日本の組織では、トップダウン型の指示系統が一般的でしたが、「はやぶさ」チームは、メンバー間の活発な意見交換や、ボトムアップ型の提案を積極的に取り入れることで、新たな価値を生み出しました。
この成功は、日本が得意とする「改善」や「改良」だけでなく、「独創性」や「新しい発想」を重視することの重要性を示しています。これまでのように、先駆者に学び、既存の技術を洗練させるだけでなく、未知の領域に挑戦し、新たな地平を切り開くことで、日本の科学技術はさらなる発展を遂げることができるでしょう。
「はやぶさ」は、困難な状況下でも諦めずに挑戦し続けることの大切さを教えてくれました。失敗を恐れず、未知の世界に果敢に挑むことで、私たちは未来を創造することができるのです。
私はよく「高い塔を建ててみなければ新し水平線は見えない」と申させていただくのですが、いまのレベルに安住して、足元を固めることばかりに一所懸命になっていたら、絶対にその先にある地平線は見えません。私たち「はやぶさ」プロジェクトも客観的に見れば成功するかどうかは未知数でした。まして途中ではいろんなトラブルがあって、帰って来られる可能性はものすごく低かったわけです。 失敗するかもしれない。途中で壊れてしまうかもしれない。それでも前人未踏の境地に挑戦しようと発心し、一度やると決めたら挫けずに、ゴールを目指し続ける。それがこのプロジェクトを成し遂げられた要因ではないかと思います。
人事としてどう考えるか
「はやぶさ」プロジェクトの成功は、人事の視点から見ても多くの示唆を与えてくれます。
まず、明確な目標設定と共有の重要性が挙げられます。プロジェクトマネージャーが掲げた「地球へのサンプルリターン」という目標は、チーム全体に浸透し、共通認識として機能しました。これは、人事においても、組織全体の目標やビジョンを明確にし、従業員に共有することの重要性を示唆しています。目標が明確であれば、従業員は自身の役割や貢献を理解しやすくなり、モチベーション向上やエンゲージメント強化に繋がります。
次に、リーダーシップの重要性です。川口氏のリーダーシップは、目標達成への強い意志、状況判断能力、そしてチームメンバーへの信頼に基づいていました。人事においても、このようなリーダーシップを持つ人材の育成が重要です。リーダーシップ研修やメンタリングプログラムなどを実施し、リーダーとしての資質向上を支援することが求められます。
チームの自律性と多様性も重要な要素です。はやぶさチームは、少人数ながらも各メンバーが自律的に行動し、多様な視点やアイデアを活かして課題解決に取り組みました。人事においても、多様な人材を採用し、それぞれが能力を発揮できるような環境を整備することが重要です。また、自律性を促進する制度や評価システムを導入することで、従業員の主体性や創造性を引き出すことができます。
さらに、「はやぶさ」プロジェクトは、従来の日本の組織文化とは異なる、新しい働き方を提示しました。メンバー間の活発な意見交換や、ボトムアップ型の提案を積極的に取り入れることで、組織全体の活性化に繋がりました。人事においても、このような新しい働き方を促進する制度や風土づくりが求められます。例えば、テレワークやフレックスタイム制の導入、社内コミュニケーションツールの活用などが考えられます。
「はやぶさ」プロジェクトの成功は、人事戦略の重要性を改めて認識させてくれます。明確な目標設定、リーダーシップ育成、自律性と多様性の尊重、そして新しい働き方の促進など、人事の取り組みが組織の成果に大きく影響することを示唆しています。これらの教訓を活かし、人事戦略を再構築することで、組織はさらなる成長を遂げることができるでしょう。
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小惑星探査機「はやぶさ」の成功を象徴しています。宇宙空間に浮かぶ「はやぶさ」が、地球を背景にして描かれています。その下には、多様な技術者や科学者たちが協力して働く様子が表現され、チームワークとコラボレーションの重要性が強調されています。星々が輝く広大な宇宙は、探査と革新、そして未来への無限の可能性を象徴しています。
1日1話、「生き方」のバイブルとなるような滋味に富む感動実話を中心に365篇収録されています。素晴らしい書籍です。