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【書籍】岡田武史氏の教訓ーサッカーから学ぶ、ビジネスと人生での勝利の秘訣

 『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』(致知出版社、2020年)のp314「10月1日:勝負の神様は細部に宿る(岡田武史 日本サッカー協会理事・サッカー日本代表前監督)」を取り上げたいと思います。

 岡田氏のリーダーシップの下、2010年の南アフリカワールドカップに臨む過程で、日本代表チームは顕著な変化を遂げました。特に注目すべきは、ワールドカップ本番の約1ヶ月前に行われた主力選手の大胆な入れ替えです。この決断は多くの人々から驚きと賞賛をもって迎えられましたが、岡田氏にとっては、すでに長期間にわたり準備され、熟考された戦略の一環でした。

 彼は、当年1月から選手たちのパフォーマンスに注目しており、いざという時のための準備を着々と進めていたのです。そして、ワールドカップ直前の国際試合での四連敗は、予期せぬことではありましたが、チームにとっては危機感を煽り、団結力を高める契機となりました。メディアやサポーターからの厳しい批判を経験したことで、選手たちは「やらなければならない」という強い意志を持つようになり、チームとしても一層の成長を遂げました。

 岡田氏は、勝利に向けて可能な限りの準備をすることの重要性を説きます。彼によれば、勝利への道は「偶然」に頼るものではなく、成功のためには「運」を自らの手で掴み取るべきだとのことです。そのためには、睡眠時間を削ってでも試合のビデオ分析に励み、翌日の練習に全力を注ぐことが求められます。岡田氏は、このような徹底した努力が最終的には「神様からのご褒美」として報われると信じています。

 また、岡田氏は「勝負の神様は細部に宿る」という言葉を信条としています。勝敗が決する瞬間、多くの人が戦術や戦略に目を向けますが、彼は勝負の大半が「小さなこと」によって左右されると感じています。このため、彼はどんな小さなことにも注意を払い、全てにおいて徹底的に取り組むべきだと説いています。そして、その姿勢が選手たちにも受け継がれ、チーム全体としても小さなことを見落とさず、細部にまで気を配ることで、大きな成功を掴むことができたと考えています。

それともう一つ、ずっと言ってきたことですが、「勝負の神様は細部に宿る」と。勝ち負けが決まると、マスコミの人はいろんな戦術論を並べ立てるんですが、僕は感覚的に八割ぐらいは「小さなこと」が勝負を分けているように思うんです。だから僕は、細かいことにものすごくうるさいんですよ。おまえがあそこでたった一回、「まぁ、いいか」とか「これぐらいで大丈夫だろう」と気を抜いたために、運を掴み損ね、W杯へ行けなくなってしまった。 そんなふうに運を掴み損ねたくなかったら、どんな小さいこともすべてきちっとやれ、と。で、今回、選手たちはそれをちゃんとやってくれたんですよ。そうやって運を掴み損ねなかったから、あそこまで行けたんだと思うんですよね。

『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』(致知出版社、2020年)p314より引用

 岡田氏の指導哲学は、準備と心構え、そして細部への注意という三つの柱に支えられています。ワールドカップという世界の舞台において、選手個々の技術や戦略的な決断もさることながら、チーム一丸となって挑む姿勢が最終的には成功をもたらすという彼の信念は、多くの人々に影響を与え、日本サッカー界における彼の功績を今に伝えています。

人事の視点から考えること

 岡田氏の南アフリカワールドカップ(W杯)における日本代表チームの指揮と準備は、ビジネスとスポーツの世界をつなぐ貴重な洞察に満ちています。彼の経験と戦略からは、人事管理、組織運営、リーダーシップに関する多くの重要な教訓を学ぶことができます。これらの教訓は、細部への注意、予期せぬ困難への対応、結果に対する健康的な姿勢、強固なリーダーシップという四つの主要なテーマに分けられます。

細部への注意

 「勝負の神様は細部に宿る」という岡田氏の信念は、組織の成功において小さなことが重要であることを示しています。ビジネス環境では、プロジェクトの成功はしばしば、細かいデータの分析、コミュニケーションの質、日々の業務の効率性など、小さな要素に依存しています。たとえば、顧客満足度を高めるためには、細かい顧客のフィードバックに耳を傾け、それに基づいて製品やサービスを微調整することが重要です。同様に、従業員のエンゲージメントを高めるには、個々の従業員のニーズや期待に注意を払い、個別に対応することが求められます。

予期せぬ困難への対応

 岡田氏のW杯直前の国際試合での4連敗からの学びは、困難や挫折はチームを団結させ、成長させる機会になるということです。ビジネスでは、市場の変動、競合の新戦略、あるいは内部の問題など、予期せぬ困難に直面することは珍しくありません。重要なのは、これらの困難を乗り越える過程で組織がどのように対応し、適応し、学ぶかです。危機管理計画の策定、柔軟性と迅速な対応能力の育成、失敗からの学びを組織文化に組み込むことが、こうした挑戦を乗り越える鍵となります。

結果に対する健康的な姿勢

「全力を尽くした後は運を天に任せる」という岡田氏の哲学は、努力と結果の間の健全なバランスを保つことの重要性を教えてくれます。ビジネスにおいても、目標達成のために最善を尽くすことは必須ですが、外部の影響や予測不可能な要素によって結果が左右されることを認識することも大切です。これは、過度のプレッシャーから逃れ、長期的な視点を保つために役立ちます。成功と失敗を健康的な視点で捉え、継続的な改善と成長に焦点を当てることが、持続可能な組織運営のためには不可欠です。

強固なリーダーシップ

 岡田氏の経験は、困難な状況でも冷静さを保ち、適切な判断を下すリーダーの価値を浮き彫りにします。組織内でリーダーシップを発揮するには、ビジョンの設定、チームメンバーの動機づけ、目標達成に向けた戦略の策定と実行が必要です。また、リーダーは変化に対応し、チームを統合し、各メンバーが持つ潜在能力を最大限に引き出す責任を担います。リーダーシップは、組織の目標達成だけでなく、文化の形成、倫理的基準の設定、将来への道筋を示す上でも中心的な役割を果たします。

 岡田武史氏のサッカー日本代表への取り組みから得られる教訓は、人事管理と組織運営のさまざまな側面に適用可能です。彼の経験は、ビジネスリーダーやHRプロフェッショナルが直面する課題に対処し、組織を成功に導くための価値ある洞察を提供してくれます。細部へのこだわり、予期せぬ困難への適切な対応、結果に対する健全な姿勢、そして強力なリーダーシップは、どの組織にとっても成功への鍵となる要素です。これらの原則を実践に移すことで、ビジネスリーダーや人事担当者は、変化の激しい現代のビジネス環境において、組織と従業員の両方を成長させ続けることができるでしょう。

濃密な戦略会議の様子を描いています。部屋はサッカー戦術が書かれたホワイトボード、さまざまなサッカー試合の映像が流れるスクリーン、そして南アフリカをハイライトした世界地図で満たされています。皆がデータやノートに集中して取り組む様子からは、準備と細部への注意に対する強いコミットメントが感じられます。このシーンは、戦略、分析、そして課題を克服するための意志というスポーツにおけるチームワークとリーダーシップの本質を捉えています。画風は柔らかく優しいもので、ワールドカップへの準備の真剣さを表現しています。


1日1話、読めば思わず目頭が熱くなる感動ストーリーが、365篇収録されています。仕事にはもちろんですが、人生にもいろいろな気づきを与えてくれます。素晴らしい書籍です。




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