「人事課題を解決したい」企業の方に対し、私がお尋ねする観点
私は、地方企業様の人事課題の解決支援を行う活動に取り組んでおります。人事に関する制度設計や評価体系の見直し、人材育成プランの策定など、幅広いテーマについて企業様をサポートしております。その際には、経営者の方々や人事担当者の方々と多くのコミュニケーションを重ね、企業ごとの特性や課題に合わせた最適な解決策をご提供しています。
この際、人事制度に関する議論はもちろんですが、企業全体の経営状況についてもよく確認させていただき、それに基づいた支援を行っています。このような全体的な経営状況に関する話を共有することは、企業様の成長に資する本質的なサポートを提供するために非常に重要な要素だと考えています。
また、経営状況を深く理解することで、人事制度の策定や見直しがより現実的かつ効果的なものとなり、企業の持続的な成長を支援することが可能となります。
特に最近では、「人事は経営の根幹である」という認識が広まりつつあり、多くの経営者の方々が人事の重要性を理解している状況です。しかし、総論として理解されているものの、具体的な施策に落とし込み、深く議論を展開することは容易ではありません。
特に、初期段階で「サーベイシート」のような詳細な資料を使用した場合、それぞれの項目が自社にどのような影響をもたらすのかを具体的に理解することは難しいと感じる経営者様も少なくありません。また、そのシートを使用して本当に効果的なアウトプットが得られるのかという疑問を持たれることもあります。
そのため、効果的な支援を行うためには、企業に応じた柔軟な対応が求められます。柔軟な対応を行うことで、企業ごとの特性や独自の課題に応じた具体的な支援が可能となり、それが最終的に企業の競争力を高めることに繋がると考えています。
以下に、コミュニケーションを通じて取り扱う内容の一例を示しますが、これはあくまで参考のためのものであり、すべての項目を網羅的に確認することが目的ではありません。企業様ごとの状況や課題に合わせ、必要に応じて共有しながら、課題解決に向けた取り組みを進めていくことが大切です。
また、これらの項目については「どれが良くてどれが悪い」という判断をすることが目的ではなく、自社の現状を正確に認識し、それを社内で共有することが重要であると考えています。現状の認識と共有こそが、企業内での共通理解を生み、全員が同じ方向に向かって取り組むための土台となります。
経営上の基本的情報(例)
自社所在地と人口動向(都市部、地方?)
自社がどの地域に位置しているのか、そしてその地域の人口動向について理解することは重要です。特に都心部に位置している場合、顧客の数も競合の数も多くなり、それに応じた競争戦略が求められます。一方で地方に位置している企業であれば、その地域ならではの特性を活かしたサービス展開が可能です。地域特性を深く理解し、それを最大限に活用することで競争力を高めることができます。
また、自社がどのような業種で活動しているのか、取引先がどの業種に属しているのかといった情報も経営において非常に重要です。業界内での自社の位置づけや現状、そして将来性について把握することで、効果的な経営戦略を立てることが可能となります。業種ごとの特性を理解し、自社の強みや弱みを明確にすることで、より具体的な成長戦略を描くことができます。
社長のお考え・強さ(創業者・創業家、外部の方?)、役員構成、株主情報
特に中小企業においては、社長の影響力が非常に大きいことが一般的です。社長が創業者であるのか、創業者の家族であるのか、もしくは外部から招聘された方なのかといった情報は、企業の方向性や文化に大きな影響を与えます。また、創業者が院政的に影響力を行使している場合、現経営陣の意思決定にも影響が出ることがあります。
さらに、役員の構成についても注目する必要があります。例えば、社長の家族が役員を務めている場合、その役員が企業内でどのような役割を担っているのかが企業運営に大きく影響します。また、株主の構成についても確認し、企業の持続可能性や意思決定のスピードにどのような影響があるのかを考慮することが重要です。役員や株主の影響力を正確に把握することで、企業内のパワーバランスや意思決定プロセスを理解し、より効果的な支援が可能となります。
取扱商品、業界における競争力
企業として最も基本的な事項は、自社がどのような商品やサービスを取り扱っているのか、そしてその商品やサービスが業界内でどの程度の競争力を持っているかということです。これは企業そのものの中核をなす要素であり、商品の競争力を高めるための施策を検討することが重要です。また、競合他社との比較を通じて、自社の強みをさらに伸ばし、弱点を克服するための具体的な戦略を立てることが求められます。
財務情報(BS、PL、CF)、現状および今後の動向
財務情報の把握も非常に重要です。バランスシート(BS)や損益計算書(PL)、キャッシュフロー(CF)などを通じて、企業の財務状況を把握し、健全な経営を行うための基盤を築くことが必要です。特にキャッシュフローについては、資金繰りの安定を確保するために重要であり、今後の資金調達戦略とも関連しています。企業の財務状況を把握することで、資金の流れを適切に管理し、成長に必要なリソースを確保することが可能となります。
資金調達(自力、金融機関、VC他)
どのように資金を調達しているかということも、その企業の経営方針や成長戦略に深く関わります。自力で資金を調達することが必ずしも最善ではなく、適度な借入れを行うことも重要な選択肢です。金融機関との関係性を築くことや、ベンチャーキャピタル(VC)からの資金調達による成長戦略の検討も必要です。適切な資金調達戦略を立てることで、企業の成長に必要なリソースを確保し、安定した経営を実現することができます。
システム(会計関係および人事以外のシステム、その他)
企業の基幹システムについても確認が必要です。特に会計システムは企業経営において重要な役割を果たします。人事関連以外にも、購買や生産管理などのシステムがどのように導入されているかを把握し、企業の業務効率化に繋げることが求められます。
また、社内のコミュニケーション手段としてメールやチャットツールをどのように活用しているのかも、業務の円滑な進行に影響を与える重要な要素です。ITインフラの整備状況は、業務の効率化や社員間の連携強化に直結するため、システムの導入状況を正確に把握することが求められます。
士業の方の関わり
会計士や税理士、弁護士、社会保険労務士などの士業の方との関係性についても確認します。中小企業においては、会計や税務、労務管理を外部の士業の方にアウトソーシングしているケースが多く見受けられます。これにより、企業内での業務負担を軽減し、専門的な知識を活用することで経営の質を向上させることが可能です。また、士業の方との連携を強化することで、法的リスクの軽減や経営の安定性を高めることができます。
人事関係の基本的情報(例)
経営上の基本的な情報を把握させていただいた上で、より具体的な人事関連の情報の確認を行います。これにより、企業が抱える人事課題の本質を浮き彫りにし、解決策を検討していくプロセスが始まります。人事に関する課題は、企業の競争力や従業員のエンゲージメントに直接的に影響を与えるため、重要なポイントとなります。
組織(本社・支店・工場の有無)
企業の組織構成について確認します。本社や支店、工場がどのように配置されているか、全体としてどの程度の規模の組織であるのか、間接部門がどれくらい存在しているのかを把握することは、企業の考え方を理解する上で重要です。組織図を見ながら、企業の経営方針や戦略を読み取ることができます。組織の構成は企業文化や業務の進め方に大きな影響を与えるため、詳細に把握することが求められます。
社内の雰囲気
やや抽象的ではありますが、社内の雰囲気を一言で表すとどのようなものかという点も確認します。これは、経営者のみならず、従業員との直接的なやり取りから得られる情報を基に総合的に判断します。
例えば、風通しが良い企業文化であるのか、トップダウンの強い企業であるのかといった情報は、人事制度の設計や運用において重要な要素です。社内の雰囲気は、従業員のモチベーションやエンゲージメントにも大きく影響するため、特に注意深く観察する必要があります。
役員の管掌部門
役員がどのような部門を担当しているかという点も、企業の考え方を理解する上で重要です。例えば、財務部門を担当する役員が強い権限を持っている場合、企業の経営において財務面が優先されていることが推測できます。どの役員がどの部門を管掌しているかを把握することで、企業の組織体制や方針をより深く理解することができます。また、役員が管掌する部門のパフォーマンスが企業全体に与える影響を把握し、適切な支援を提供することが求められます。
従業員(従業員数、職種、正社員・非正社員・人材派遣等、学歴(大卒・高卒)、年齢階層、採用・退職動向)
従業員に関する情報も非常に重要です。正社員と非正社員の比率や、従業員の職種、学歴、年齢構成などは、企業がどのような人材戦略を取っているのかを示しています。また、採用や退職の動向についても把握することで、企業の人材確保や定着率に関する課題を浮き彫りにし、適切な対策を講じるための基盤を作ることができます。特に、どのような人材が求められているのか、どのような理由で退職が発生しているのかを分析することは、今後の採用戦略や従業員エンゲージメント向上のために重要です。
報酬レベル(特に地方企業の場合、地域競争力があるか、新卒は初任給も重要、退職金)
最近では賃金の引き上げに関する議論が多くなされていますが、自社が地域内で競争力のある報酬体系を持っているかどうかも重要です。特に地方企業の場合、地域での競争力を維持するためには、新卒採用における初任給や退職金制度が大きな影響を与えます。これらの要素を他社と比較し、競争力のある報酬体系を構築することが重要です。報酬制度は、従業員のモチベーションや企業への定着率にも直結するため、慎重に設計する必要があります。
制度の有無・運用(就業規則、報酬体系、人事・評価、福利厚生、教育、その他制度)
中小企業では、制度が整っていないケースも多く見られます。制度が整備されていること自体が重要なのではなく、それが企業の現状とバランスが取れており、実際に運用できているかが大切です。手厚すぎる制度を導入した結果、運用が追いつかないというのでは本末転倒です(このような例はよく見られます)。企業の規模や文化に応じた適切な制度設計が求められます。制度の設計と運用のバランスが取れていることで、従業員の満足度向上や業務の効率化に繋がります。
採用(新卒、中途)、採用手法(紹介(縁故)、ハローワーク、エージェント)
採用活動の方法についても詳しく確認します。新卒採用を中心に行っているのか、中途採用が主体なのか、また採用手法としてどのような手段を用いているのかといった点です。例えば、縁故による採用が企業文化においてどのように受け入れられているか、ハローワークやエージェントを利用している場合の定着率なども、企業の採用戦略に影響を与える重要な要素です。採用手法によって得られる人材の特性や定着率が異なるため、それぞれの方法のメリットとデメリットを把握することが求められます。
システム(人事関係システム)
人事関連のシステム導入状況についても確認します。給与計算システムや勤怠管理システムなど、人事業務を効率化するためのシステムが導入されているかどうかは、企業の人事管理の成熟度を測る指標となります。中には、クラウドベースのシステムを利用している企業や、特定の業務をアウトソーシングしている企業もあります。人事システムの導入は、業務の効率化だけでなく、データに基づいた戦略的な人事施策を可能にするための重要な基盤です。一方、現時点で必ずしもシステム化を急ぐ必要がないものもあります。
障害者雇用、女性活躍、健康経営
障害者雇用や女性活躍の推進、そして健康経営についても、企業が持続可能な成長を目指す上で重要なテーマです。法的な義務があるかどうかに関わらず、これらの取り組みを積極的に行うことで、企業の社会的責任を果たし、従業員のエンゲージメントを高めることができます。また、これらの取り組みは企業ブランドの向上にも寄与し、優秀な人材の確保に繋がる可能性があります。健康経営の取り組みは、従業員の健康維持や生産性向上にも直接的に影響を与えるため、経営戦略の一環として重要です。
以上のように、経営上の基本情報および人事関連の情報を把握しながら、企業様ごとの課題を設定し、それに対して適切な施策を実施していくことが私の役割です。一度にすべての課題を解決するのは難しいことが多いですが、少しずつ課題を共有し、解決策を実行に移していくプロセスこそが、企業の持続的な成長に繋がると信じています。課題の解決には時間と努力が必要ですが、企業と共に成長していくことを目指し、最適なサポートを提供してまいります。
(人事・組織活性化の応援家:hidemaruの自己紹介)
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