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豊かな人間関係を築くための自己表現ーアサーション入門(平木典子氏)
『アサーション入門――自分も相手も大切にする自己表現法』(平木典子、講談社、2012年)を再度読み返しました。
アサーションとは、「自分も相手も大切にする自己表現」であり、より良い人間関係を築くためのコミュニケーション方法です。コミュニケーションや人間関係に問題を抱えているときに、アサーションを理解すると、建設的に状況を変えられます。アサーションは心理学に基づいており、日常のコミュニケーションに変化と充実をもたらします。自己表現に小さな変化が生まれると、気分が変わり、他の行動にも良い影響を与え、より豊かな人生を送れるようになるでしょう。
本書にはそのヒントが多く盛り込まれています。そして、企業の中でどう展開していくかを考察してみたいと思います。
自己表現の3タイプ
自己表現には、大きく分けて「非主張的」「攻撃的」「アサーティブ」の3つのタイプがあります。
非主張的
自分の意見や気持ちを言わない、または曖昧に表現するタイプです。相手を優先し、自分のことは後回しにするため、自己犠牲を払い、結果として相手の言いなりになってしまうことがあります。言いたいことを我慢することで、ストレスが溜まり、人間関係において不満や怒りが蓄積し、最終的に爆発してしまう可能性もあります。
また、自分の意見を言わないことで、誤解されたり、無視されたりすることもあります。例えば、頼まれた仕事を断れずに引き受け続け、心身に負担がかかってしまう、行きたくない飲み会を断れずに参加してしまう、などが挙げられます。攻撃的
自分の意見を押し通し、相手の気持ちを無視するタイプです。自分の意見が通っても、相手を傷つけたり不快にさせたりするため、人間関係が悪化し、孤立を招く可能性があります。
攻撃的な人は、一見すると自信があるように見えますが、実際には不安や恐怖を感じており、それを隠すために攻撃的な態度を取っている場合もあります。例えば、店員に対して高圧的な態度を取る、部下に理不尽な要求をする、などが挙げられます。アサーティブ
自分も相手も尊重し、率直かつ正直に自分の考えや気持ちを伝えるバランスの取れた自己表現です。アサーティブな人は、自分の意見や感情を明確に表現することができますが、同時に相手の意見や感情にも耳を傾け、尊重します。
アサーティブなコミュニケーションは、相互理解を深め、良好な人間関係を築く上で非常に重要です。例えば、頼まれた仕事を引き受けるのが難しい場合は、その理由を説明し、代替案を提案する、行きたくない飲み会は、正直に断る、などが挙げられます。
アサーションは、相手を尊重しながら自分の意見や感情を表現する権利を認め、建設的なコミュニケーションを通じて、より良い人間関係を築くことを目指します。アサーションは、人間関係における基本的な権利を認識し、それを実践するための具体的な方法を提供します。
アサーションを身につける3つのステップ
【ステップ1】自分の気持ちを確かめる
自分の意見や感情を明確にする。曖昧な考えや気持ち、たとえば、悲しくもあり腹立たしくもありといった対立する感情や迷い、困惑などに素直に気づくことが大切です。自分の気持ちを理解し、受け入れることで、初めて相手に伝えることができます。例えば、「本当は断りたいけど、断ったら相手をがっかりさせてしまうかもしれない」という葛藤を認識し、「断りたい」という自分の気持ちに気づくことが重要です。
【ステップ2】事実や状況を共有する
相手と情報を共有し、共通の理解を築く。コミュニケーションの行き違いを防ぎ、誤解を生まないためには、事実や状況を明確に伝えることが重要です。例えば、頼まれた仕事を断る際に、「締め切りが近い他の仕事を抱えているため、今回は難しい」という事実を伝えることが大切です。
【ステップ3】提案は具体的に
自分の要望や提案を明確に伝える。曖昧な表現や遠回しな言い方は、相手に誤解を与えたり、自分の意図が伝わらない可能性があります。具体的に伝えることで、相手も理解しやすく、建設的な話し合いを進めることができます。例えば、「今回は難しいが、来週以降であれば引き受けることができる」といった具体的な提案をすることが重要です。
これらのステップを踏むことで、誤解や対立を減らし、より円滑なコミュニケーションを促すことができます。アサーションは、練習と経験を通じて身につけることができるスキルです。
場面、相手によっての使い分け
アサーションは、特定の場面や相手によって使い分ける必要があります。仕事上の課題を達成するためのアサーションと、良好な人間関係を築くためのアサーションでは、それぞれ異なるアプローチが必要になります。
タスクのためのアサーション
仕事や課題を達成するためには、論理的思考や分析結果、具体的な提案や方法を伝えるコミュニケーションが求められます。例えば、プロジェクトの会議で、自分の意見を論理的に説明し、具体的な解決策を提案する、などが挙げられます。メンテナンスのためのアサーション
良好な人間関係を築くためには、非言語的行動や情緒的表現が有効です。相手の気持ちに共感し、受容する表現や、思いやりや配慮の言葉かけが重要になります。例えば、落ち込んでいる友人を励ます、感謝の気持ちを伝える、などが挙げられます。
アサーションは、単なるテクニックではなく、相手を尊重し、自分も大切にするという姿勢に基づいたコミュニケーションです。アサーションを身につけることで、より良い人間関係を築き、自分らしく生きる力を得ることができます。アサーションは、自己理解を深め、自己表現を豊かにし、より充実した人生を送るための鍵となるでしょう。
企業にどう取り込んでいくか
アサーションは、組織内のコミュニケーションを円滑にし、従業員のエンゲージメントを高めるために非常に重要なスキルです。組織内での人間関係やコミュニケーションは、企業の生産性や業績に大きな影響を与えます。アサーションを理解し、実践することで、従業員がより働きやすい環境を構築し、組織全体の活性化を促すことができます。
非主張的な従業員は、自分の意見や不満を伝えることができず、問題を一人で抱え込んでしまいます。その結果、ストレスが蓄積し、モチベーションの低下や燃え尽き症候群に繋がることがあります。また、問題が潜在化することで、組織全体の課題解決が遅れる可能性もあります。
一方、攻撃的な従業員は、自分の意見を一方的に押し付け、相手の意見を尊重しないため、周囲との摩擦や対立を生みやすく、チームワークを崩壊させるリスクがあります。また、ハラスメントやパワハラの加害者になる可能性も高く、企業にとって大きな損失をもたらす可能性があります。
これに対して、アサーティブな従業員は、自分の意見や感情を率直かつ適切に表現し、建設的な議論を促すことができます。また、相手の意見にも耳を傾け、尊重する姿勢を示すことで、信頼関係を築き、円滑なコミュニケーションを促進します。アサーティブなコミュニケーションは、問題解決をスムーズに進め、チーム全体の生産性を向上させるだけでなく、従業員のエンゲージメントを高め、定着率の向上にも繋がります。
人事としても、アサーション・トレーニングを実施することで、従業員がアサーティブなコミュニケーションを習得できるようサポートすることができます。トレーニングでは、自己理解を深め、自分の意見や感情を適切に表現する方法を学ぶだけでなく、相手の意見に耳を傾け、尊重する姿勢を養うことも重要です。
また、アサーションは、ハラスメントやいじめなどの問題を防ぐ上でも有効な手段となります。従業員が自分の権利を主張し、不当な扱いを受けた際に適切な対応ができるようにすることで、より安全で働きやすい職場環境を構築することができます。
組織文化としてアサーティブなコミュニケーションを奨励することも重要です。管理職が率先してアサーティブなコミュニケーションを実践し、従業員が安心して自分の意見を表明できる雰囲気を作ることが大切です。
アサーションは、企業にとって、従業員の満足度を高め、生産性を向上させ、組織全体の成長を促すための重要な要素です。人事担当者は、アサーションの重要性を認識し、積極的にアサーションを促進する取り組みを行うことで、企業の競争力を高めることができるでしょう。
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二人の人物がアサーティブなコミュニケーションを行っています。現代的なオフィスの落ち着いた雰囲気の中で、一人が自信を持って話し、もう一人が注意深く聞いています。リラックスした姿勢と友好的な表情から、相互の尊重と理解が伝わり、効果的で尊敬のあるコミュニケーションが強調されています。全体的にポジティブで励ましのある雰囲気が感じられます。