真のチームワークとは?成果で測る協力の力:いまのたかの組織ラジオ#205
今野誠一氏(GOOD and MORE)と高野慎一氏(aima)によるユニット『いまのたかの』。マネジメントと組織の現場についてカジュアルに語る、「組織ラジオ」です。
今回は、第205回目「今さら聞けない「チームワークってなに?」」でした。ここでは、「チームワーク」とは何かという非常に基本的ながら重要なテーマについて、深く掘り下げた議論が展開されています。
冒頭で、「チームワークが大事だとはわかっているが、具体的にそれが何を意味するのかが曖昧なまま使われていることが多い」という問題が提起されます。これは、特に現代の多くの組織やチームにおいて、チームワークの概念が漠然として捉えられている場合があることを指摘しており、この問題について掘り下げる必要性を提案しています。
確かに、「チームワークが良い、悪い」というのはよくいわれますが、その中身を深掘りしないと、ミスリードになる可能性があります。内容を深掘りして、人事としての考察をしてみたいと思います。
満足が良い結果をもたらすのではなく、良い結果が満足を生む
まず話題となったのは、リチャード・ハックマンという心理学者の研究です。ハックマンは、ハーバード大学の心理学部で研究を行っていた人物であり、提唱する「チームワークの5つの条件」は非常に興味深いものとして紹介されました。
この中で特に注目されるのが、「チーム全員が完全に満足しているよりも、多少の不満を抱えているチームの方が優れた成果を上げることが多い」という研究結果です。この発見は一見逆説的に感じられるかもしれませんが、ここでのポイントは、満足が良い結果をもたらすのではなく、良い結果が満足を生むということです。
つまり、チーム全員が満足している状態が必ずしも優れた成果に結びつくわけではなく、むしろ一定の緊張感や問題意識があった方が、チームとしてのパフォーマンスが向上するということです。
具体例として、ハックマンが行ったオーケストラの調査が紹介され、全員が完全に満足しているオーケストラよりも、多少の不満を抱えているオーケストラの方が、より良い演奏をしたという結果が示されています。
この結果から、組織やチームにおいては、リーダーが不満の原因を単純に解消しようとするのではなく、不満がどのような背景で生じているのか、そしてそれがチームのパフォーマンス向上にどう影響するのかを深く考える必要があるとしています。
以下HBRもご覧下さい。大変興味深い内容です。
結果重視のアプローチ
ここでは、単に人間関係が良好であることがチームワークの良さを示すわけではないということを指摘しています。たとえメンバー同士の関係が良好であっても、チームとして目標に到達できなければ、それは真の意味でのチームワークとは言えないということです。
話の中では、摩擦や意見の衝突があったとしても、それを乗り越えて目標を達成できるチームこそが、優れたチームワークを持っているといえると説明しています。このような視点から、リーダーやチームメンバーが重視すべきは、人間関係の表面的な満足度ではなく、最終的にどのような結果をチームとして出せるかであり、それこそがチームワークの本質であるとしています。
チームにおける個々の役割とその貢献
次に、高野氏のパーソナルな経験を例に挙げてます。レギュラーメンバーから外れた先輩がチームの応援に回り、その姿が他のメンバーに大きな影響を与えたエピソードが紹介されます。これは、たとえ自分が表立った役割を果たせなくなったとしても、チーム全体の成功に貢献するためにできることがあるというメッセージを伝えています。具体的には、応援を通じてチームの士気を高め、最終的に勝利を導いたというエピソードが語られています。
この話から、個々が自分の役割を理解し、それに向き合うことでチーム全体の成功に貢献するということが分かります。チームワークとは、個々のメンバーが自己中心的な視点ではなく、全体の成功を念頭において行動することで成り立つものであり、その中で自分がどのように貢献できるかを考えることが重要だとされています。
社会的手抜き
チームワークを阻害する要因として、「社会的手抜き」という現象が紹介されています。これは、チームの中で「誰かがやってくれるだろう」といった考え方が蔓延し、個々のメンバーが全力で責任を果たそうとしなくなる状況を指します。この「社会的手抜き」は、特に多人数が関わるプロジェクトや組織において発生しやすく、結果的にチーム全体のパフォーマンスを低下させる要因となります。この現象を避けるためには、チーム全員が自分の役割と責任をしっかりと認識し、他のメンバーに依存せずに行動することが重要であると強調されています。
まとめ
今回の話題では、チームワークとは単に仲の良さや表面的な満足感ではなく、明確な目標に向かって全員が協力し、結果を出すために努力するプロセスであるという結論に至ります。各メンバーが自分の役割を理解し、その役割に真摯に向き合うことで、チーム全体としてのパフォーマンスが最大化されるという考え方が、お二人のを通じて繰り返し強調されています。
また、このプロセスにおいては、多少の不満や摩擦が生じることがあっても、それがチームの成長や成功に繋がる可能性があるという視点が示されています。チームワークを考える際には、このような多面的な要素を踏まえたアプローチが必要であるという重要なメッセージが、このエピソードを通じて伝えられているように思います。
人事の視点から考えること
今回のお話から、人事の視点からチームワークを考える際に留意すべき要点について、考察してみたいと思います。
組織内でのチームワークをいかに構築し、維持し、さらに高めていくかは、人事の重要な責務です。この責務を果たすために、人事担当者が取り組むべき課題や実践すべき施策を考えてみます。
1. 成果重視のチーム形成とその評価基準の確立
話の中では、チームワークが単なる人間関係の良好さに依存するものではなく、最終的には目標達成に向けていかに成果を出すかに焦点を当てるべきだと強調されています。
この観点から、人事担当者としては、チームが結果を出すために必要な環境や評価基準を整備することが求められます。特に、チームとしての成果をいかに評価するかという課題に対しては、客観的かつ公正な基準を設ける必要があります。具体的には、単に個人のパフォーマンスだけではなく、チーム全体の連携や協力の度合い、そしてそれがどのように目標達成に貢献したかを評価の要素に含めるべきです。これにより、メンバーが個々の成果だけでなく、チーム全体の成功に対しても責任感を持つようになります。
また、成果を重視する評価体制を整えることで、リーダーやマネージャーがチームメンバーの行動を適切にフィードバックし、チーム全体の成長を促すことができます。この評価基準を明確にすることによって、単なる「仲の良いチーム」ではなく、成果を生み出すことができる強いチームを作り上げることが可能となります。
したがって、人事担当者は、個人とチームの両方のパフォーマンスを評価する指標を開発し、それに基づいたフィードバックを提供することで、組織全体のパフォーマンスを向上させる責務を負っています。
2. 健全な不満を促進する組織風土の構築
ハックマンの研究に基づく「多少の不満が優れた成果を生む」という考え方は、組織内における不満の捉え方を再考する上で非常に重要です。不満は必ずしもネガティブな要素ではなく、チームの成長や改善を促進するポジティブな刺激と見なすことができます。これは、人事の立場から見ると、従業員の声を積極的に収集し、問題点を見える化するプロセスを作ることの重要性を示唆しています。従業員が現状に対して何らかの問題意識や改善の提案を持っている場合、それを無視するのではなく、組織全体で共有し、建設的なフィードバックを提供することが必要です。
さらに、不満を解決するためのメカニズムを整備し、メンバーが安心して意見を言える環境を作ることも大切です。定期的なフィードバックセッションやオープンな意見交換の場を設けることで、メンバーは自分の意見や提案が組織にとって重要だと感じ、モチベーションが向上します。
人事は、このようなプロセスを主導し、組織内でのコミュニケーションの活性化とともに、健全な不満が生産性向上に繋がるような文化を形成する役割を担うべきです。
3. 役割と責任の明確化によるチームワークの強化
チームワークを効果的に機能させるためには、各メンバーの役割と責任を明確に定義し、それに応じたリソースやサポートを提供することが不可欠です。ラジオで言及されている「社会的手抜き」の現象、つまり大勢の中で「他の誰かがやってくれるだろう」という依存的な態度が発生することは、組織内でもしばしば見られる問題です。このような事態を防ぐためには、メンバーそれぞれに具体的な役割と責任を明確に割り当てることが重要です。
人事の視点からは、各メンバーが自分の役割を理解し、その役割に応じたパフォーマンスを発揮するための支援を行う必要があります。例えば、役割分担をより細分化し、責任範囲を明確にすることで、メンバーが自己のパフォーマンスに対して責任を持つように促すことができます。
また、適切なトレーニングやスキル開発の機会を提供することで、各メンバーが自分の役割に対して自信を持ち、チーム全体の成功に貢献できるようにサポートすることも、人事の重要な役割です。さらに、役割分担の明確化は、チーム内の協力と相互信頼を促進する要素としても機能します。メンバーが互いの役割と能力を理解し、補完し合うことで、チーム全体のパフォーマンスが向上するのです。
4. フィードバック文化の醸成とその重要性
組織において、フィードバック文化の醸成は非常に重要です。ラジオで紹介されたエピソードにおいて、レギュラーメンバーから外れた先輩がチームを応援することで、チーム全体の士気を高め、最終的に勝利に貢献したという話がありました。このような行動は、フィードバックが正しく機能している組織でこそ見られるものであり、メンバーが自分の役割を超えてチーム全体の成功に貢献する姿勢を育むことができる環境が整っている証拠です。
人事の役割としては、組織内でのフィードバックの提供方法を明確にし、体系化することが求められます。具体的には、多面的なフィードバックや、1on1で定期的な面談を導入し、従業員が自分の強みや弱点を正確に把握できるように支援することが考えられます。また、フィードバックが単に指摘や改善を求めるものではなく、ポジティブな側面も強調されるべきです。これにより、メンバーは自己成長に対する意欲を高め、チームに対する貢献意識を強化することができます。
フィードバック文化の醸成に成功すれば、従業員同士が建設的な意見交換を行い、チーム全体としての成果を向上させるための共同作業が促進されます。人事としては、従業員がフィードバックを恐れることなく受け入れ、積極的に改善や成長を目指せるようなサポートを提供することが大切です。これにより、チーム全体のパフォーマンスを引き上げ、長期的な成功を支える土壌が育まれるでしょう。
人事の視点からの総合的アプローチ
チームワークの強化は、成果重視の評価体制の構築、不満を建設的に活用する文化の醸成、役割と責任の明確化、そしてフィードバック文化の確立という4つの側面に焦点を当てることで、組織全体のパフォーマンスを飛躍的に向上させることが可能と思います。これらの施策は、個々のメンバーが自己の役割に対して責任を持ち、チーム全体としての目標達成に向けて協力し合う文化を作るために不可欠です。
特に、チームが成果を上げるために必要な環境作りにおいて、人事はリーダーシップを発揮し、従業員一人ひとりがチームの成功に貢献することができるような体制を整えることが求められます。最終的には、これらの要素が組織全体のパフォーマンス向上につながり、持続的な成長を支える基盤となるでしょう。
オーケストラが練習中の緊張感を持ちながらも協力し合っている様子です。左側には指揮者が、真剣な表情で指示を出しており、楽団員はそれぞれ楽器に集中しています。楽団員の中には、少し緊張感を感じるメンバーもいれば、集中しているメンバーも見られます。全体的に、柔らかい色調の中にある隠れた緊張感が、成果を目指すチームワークの本質を表現しています。