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課長の最重要実務スキル:モチベーション管理と業務改善など:いまのたかの組織ラジオ#209

 今野誠一氏(GOOD and MORE)と高野慎一氏(aima)によるユニット『いまのたかの』。マネジメントと組織の現場についてカジュアルに語る、「組織ラジオ」です。

 今回は、第209回目「課長の最も大事な仕事~実務編」であり、前回の第208回目「課長の最も大事な仕事」の続編にあたるものです。

 ここでは、組織内における課長の役割がどれだけ多岐にわたり、影響力があるかを、さらに実務面で解説していました。課長という役職は、組織の中間に位置し、上層部の指示を現場に落とし込むだけでなく、現場での状況を正確に上層部にフィードバックするという、双方向の情報伝達の要として機能する必要があります。課長にはメンバーのモチベーション管理や現場での業務改善、さらにはお客様との関係構築など、多岐にわたる役割が求められるため、その実務の重要性は計り知れません。

 改めて、課長の役割を確認しながら、人事としての考察も加えてみたいと思います。

1. メンバーのモチベーション管理

 メンバーがやる気を失ってしまえば、どれほど優れた戦略や計画があっても、その実行がうまくいかず、組織全体が機能しなくなります。特に、課長はメンバーがどのような状況でもやる気を維持できるようにする役割を担っています。日常業務においては、良好な環境であれば自然とメンバーもモチベーションを保つことができますが、問題が発生したり、困難な状況に直面したときにこそ、課長の手腕が試されます。

 例えば、ピンチの時にメンバーがどのように対処し、意欲を維持するかは課長次第です。モチベーションマネジメントにおいて重要なのは、メンバー一人ひとりの特性や状況を理解し、適切な支援やアドバイスを行うことです。単に指示を与えるのではなく、メンバーが自主的に取り組む姿勢を引き出すよう努める必要があります。これは、特に長期的な視点での組織の成長に不可欠な要素となります。

2. コミュニケーションの重要性

 課長は組織内での情報伝達の中心的な役割を担っており、上層部からの指示や経営方針をメンバーに伝える一方で、現場の状況や問題点を上層部に正確に伝える役割も果たします。この情報の流れは単純な伝達ではなく、課長自身の言葉やニュアンスを加えることで、メンバーにとって理解しやすく、共感できる形で伝えることが求められます。情報の受け渡しがただの「テープレコーダー」のようになってしまうと、組織は機械的に動いてしまい、メンバーのモチベーションが低下してしまいます。

 そのため、課長が自分の意見や判断を交えてコミュニケーションを取ることが大切です。また、DX(デジタルトランスフォーメーション)が進んでも、人と人とのコミュニケーションの重要性は変わらないと強調されています。課長はただ情報を受け流すのではなく、自分の言葉で語り、メンバーに伝える役割が求められているのです。

3. 現場観察と業務改善

 課長の役割には、現場の観察と業務改善が含まれます。現場で何が起こっているのかを理解し、それに基づいて生産性を向上させるための業務フローを改善することは、非常に重要です。メンバーは日々の業務において改善提案を行うことはできても、組織全体の「変革」を行うことは難しい場合があります。ここで課長の役割が重要になってきます。課長は現場を観察し、将来を見据えた変革を進めるべきだと述べられています。

 課長が現場に足を運び、業務フローのボトルネックや無駄を見つけ出し、それを改善することが、組織全体の生産性向上につながります。このような現場観察は、データや報告書だけでは見えてこない実態を把握するために不可欠です。メンバーからの報告を鵜呑みにせず、実際に自分の目で現場を見ることが重要であるとされています。

4. お客様との関係構築

 課長のもう一つの重要な役割として、お客様との関係構築があります。課長は営業部門だけでなく、様々な部門でお客様との接点を持つ機会がありますが、単に目の前の売上を追求するのではなく、お客様の声やニーズをしっかりと把握し、それをもとに商品やサービスを改善することが求められています。お客様との会話や表情、反応を通じて、現場でしかわからない貴重な情報を得ることができ、これが将来的なビジネスの成長につながります。課長は、お客様の声に耳を傾け、メンバーや上層部にそのフィードバックを伝えることで、組織全体の方向性を修正し、より良い製品やサービスの提供を目指すべきです。このようなフィードバックの収集は、単なるデータだけではなく、現場での実感をもとにした洞察が必要となります。

5. 現場マネジメントの重要性

 さらに、現場マネジメントの重要性についても強調されています。課長は現場に出て、メンバーやお客様と直接対話し、現場の実態を把握することが必要です。データや報告書に頼るだけでは見えない現実が多々あり、課長が現場に足を運び、実際に自分の目で確認することで、より的確な判断ができるようになります。また、メンバーが提出する情報には主観が入りがちであり、それをそのまま受け入れるのではなく、課長自身が現場で確認することが重要です。現場での実際の状況を観察し、適切な対応を取ることで、課長はメンバーからの信頼を得ることができ、それが組織全体のパフォーマンス向上につながります。

6. ルーチンワークの見直し

 課長は、ルーチンワークの見直しにも積極的に取り組む必要があります。業務の96%は定例的なルーチンワークであると言われていますが、これを怠ると業務全体の進化が止まってしまいます。ルーチンワークの改善は地味に見えるかもしれませんが、これを見直すことで将来的な生産性向上が期待できます。課長は、現場でのルーチンワークが効率的に行われているかを確認し、必要に応じて新しい仕組みを導入することで、組織の成長を促進する役割を果たします。また、ルーチンワークが例外的な問題に直面したときには、課長が適切に対応し、新たな仕組みを作ることが求められます。このような対応がメンバーからの信頼につながり、課長としての権威を保つことにもなります。

人事の視点から考えること

 人事の視点から考えると、課長の役割における重要な要素は、組織全体のパフォーマンス向上と人材育成に直接影響を与えるため、慎重な戦略と管理が必要です。以下に、課長の役割を人事の視点から整理し、考察してみます。

1. メンバーのモチベーション管理とエンゲージメント向上

 課長がメンバーのモチベーションを引き出すことは、社員のエンゲージメントを高めるうえで重要な要素です。エンゲージメントの高い社員は、自発的に仕事に取り組み、組織目標達成に貢献します。人事としては、課長に対して効果的なモチベーション管理のスキルを教育し、社員一人ひとりのモチベーション要因を理解するためのツールやリソースを提供することが求められます。課長がメンバーの強みや成長意欲に目を向け、適切なフィードバックや報酬体系を活用することで、持続的なやる気を維持しやすくなります。

 人事部門としては、課長と協力して、定期的に社員のモチベーションを測定し、改善すべき点を特定することが重要です。例えば、エンゲージメント調査や1on1ミーティングを活用して、メンバーのニーズや関心を把握し、それに基づいて適切なサポートや環境改善を進めるべきです。

2. コミュニケーションスキルの育成

 課長が効果的なコミュニケーションを行うことは、組織内での情報の流れを円滑にし、意思疎通のミスを防ぐために不可欠です。特に中間管理職である課長は、上層部の戦略や方針を現場に適切に伝え、現場での意見やフィードバックを上層部にフィードバックする役割を果たします。この役割を果たすためには、単に情報を伝えるだけでなく、メンバーや上層部との間で信頼関係を築き、理解しやすい形でメッセージを伝える能力が求められます。

 人事部門としては、課長に対してコミュニケーションスキルのトレーニングを提供することが重要です。これには、対話を促進するリーダーシップスキルや、メンバーの意見を引き出すファシリテーション能力なども含まれます。また、組織全体で効果的なコミュニケーションを推進するための仕組みを整えることも、人事の責務です。例えば、定期的な部門間のコミュニケーションミーティングや、情報共有のためのデジタルツールの導入が考えられます。

3. 現場観察とパフォーマンス管理

 課長が現場を観察し、業務フローの改善に取り組むことは、組織全体の生産性向上に直結します。人事部門は、課長に対して、パフォーマンス管理の観点から現場の状況を客観的に評価するスキルを提供するべきです。これには、KPI(重要業績評価指標)に基づく評価方法や、プロセス改善の手法、現場での問題解決能力が含まれます。

 また、メンバーのパフォーマンスを適切に評価するためには、課長がメンバーの業務をただ観察するだけでなく、フィードバックを提供し、メンバーの成長を支援する姿勢が不可欠です。人事部門としては、課長がフィードバックや評価を効果的に行えるよう、評価基準やフィードバックの方法に関するガイドラインを整備し、トレーニングを実施することが重要です。

4. お客様との関係構築における柔軟な対応

 課長が顧客との関係構築を重視し、現場での顧客ニーズに対応する姿勢は、組織全体のビジネス拡大に貢献します。この点で、人事部門は、課長が顧客対応スキルを持つよう支援する必要があります。これには、顧客の声を反映した製品やサービスの改善提案を行うスキルや、顧客の要望を現場のメンバーと共有する方法などが含まれます。

 また、柔軟な対応力を高めるためには、課長が現場のメンバーと協力し、顧客の意見を反映させるためのチームワークを醸成することが重要です。人事部門としては、このような対応力を育むためのトレーニングやワークショップを提供し、課長が実際に現場で活用できるようなツールや事例を共有することが求められます。

5. ルーチンワークの見直しと改善

 ルーチンワークの見直しは、日々の業務の効率化に繋がります。課長が業務フローの見直しに取り組むことで、メンバーの負担軽減や生産性の向上が期待できます。人事部門は、業務効率を高めるための改善プロセスの支援を行い、定期的に業務の進捗や課題を確認するシステムを導入するのも良いでしょう。

 また、ルーチンワークの改善が進まない場合には、課長がどのように業務フローを変革できるかを議論し、具体的な手段を提案することも重要です。人事部門としては、課長がメンバーと連携し、現場の業務フローを分析し、改善策を立案できるようサポートする必要があります。

まとめ

 課長の役割は、組織の中での橋渡し役としてだけでなく、メンバーの成長と組織全体の生産性向上に大きな影響を与えるポジションです。モチベーション管理、コミュニケーションスキル、現場観察、パフォーマンス評価、顧客対応など、課長が担うべき多岐にわたる業務をサポートするために、人事部門は効果的なツールやトレーニングを提供し、課長がその役割を十分に果たせるような環境を整えることが不可欠でしょう。


課長がチームに対して業務の指示やコミュニケーションを行っている場面です。課長が自信を持ってチームに話しかける姿が印象的で、チームメンバーは集中しながら聞き入っています。部屋の背景には、ホワイトボードやプロジェクトの進捗が見えるチャートが配置され、明るい自然光が差し込むことで、協力的で生産的な雰囲気が感じられるビジネスシーンです。

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