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【書籍】AI時代を生き抜く組織の条件:「思考の寄り道」と多様性の力ー樋口恭介氏

 『THE21 2024年7月号』の中で、「「AI時代」のシン・人材論「思考の寄り道」を重んじる組織が生き残る」が掲載されていました。AI時代に生き残る組織の特徴が挙げられています。変化の激しい時代においても、競争力を維持し、成長を続ける組織とは。このテーマは、人事に取っても非常に興味深く、重要であり、内容を紐解きながら考察をしたいと思います。

1.多様性を受け入れ、「思考の寄り道」を許容する

 多様なメンバーで構成されたチームは、各々が持つ異なる視点や経験を持ち寄り、一人では思いつかないような尖ったアイデアを生み出す可能性を高めます。例えば、あるプロジェクトにおいて、技術的な知識を持つメンバーだけでなく、顧客のニーズを深く理解しているメンバーや、斬新な発想をするメンバーがいることで、より革新的な製品やサービスを生み出すことができるかもしれません。

 また、組織内で「思考の寄り道」を許容することも重要です。一見無駄に思えるような雑談や、一見関係のないようなテーマについて考える時間を持つことで、思わぬひらめきや新しい視点が生まれることがあります。Googleの「20%ルール」のように、社員が業務時間の20%を自由に使える時間を設けることで、GmailやGoogle Newsといった革新的なサービスが生まれた事例は有名です。このような「寄り道」を許容する文化を醸成することで、組織全体の創造性を高め、斬新なアウトプットにつながる回路を増やすことができるでしょう。

 さらに、多様なメンバーが集まることで、それぞれの強みを活かし、弱点を補い合うことができます。例えば、あるメンバーが新しい技術に詳しい一方で、別のメンバーはコミュニケーション能力に長けている場合、両者の能力を組み合わせることで、より効果的なプロジェクト推進が可能になります。また、多様な価値観を持つメンバー同士が議論することで、より深く問題を掘り下げ、より良い解決策を見つけることができるかもしれません。

2.「生産性が低い」とされる人材も抱え続けることも重要

 社会の変化は予測不可能であり、現在は目立たない人材が、将来、組織にとって重要な存在になる可能性があります。例えば、過去にはコールセンターのオペレーター業務はAIに代替されると考えられていましたが、実際にはバックオフィス業務との連携が必要なため、AIによる完全な代替は難しいという現状があります。一方で、高度な知的作業と考えられていたコンサルタント業務の一部は、AIによって代替されつつあります。

 このように、社会の変化によって「優秀な人材」の定義は容易に変わります。組織に多様な人材を抱え続けることで、予想外の変化に対応できる柔軟性を高めることができます。また、現在は「生産性が低い」と判断される人材も、適切なモチベーションを引き出すことで、組織に大きな貢献をする可能性を秘めています。
 例えば、ある社員は表面的には成果を上げているように見えなくても、社内のコミュニケーションを円滑にする役割を担っていたり、他の社員のメンターとして活躍しているかもしれません。このような「目に見えない貢献」を評価し、多様な人材を活かせる組織こそが、変化の激しい時代を生き抜くことができるでしょう。

 さらに、一見「生産性が低い」とされる人材は、実は組織にとって重要な役割を担っている場合があります。例えば、ある社員は新しい技術やトレンドに敏感で、常に情報を収集しているかもしれません。このような社員は、将来のビジネスチャンスを見つける上で貴重な存在となる可能性があります。また、別の社員は、社内の問題点や改善点を率直に指摘する役割を担っているかもしれません。このような社員は、組織の成長を促す上で欠かせない存在と言えるでしょう。

 これらの特徴に加えて、組織のリーダーは、多様なメンバーのやる気を引き出すスキルや、変化に対応するための柔軟な思考を持つことが求められます。AI時代においても、人間ならではの創造性や柔軟性を活かし、組織を成長させることが重要でしょう。

AI時代の人事戦略:多様性と潜在能力を引き出す組織づくり~持続的な成長を実現する人事の役割~

 AIの進化は、ビジネス環境を激変させ、企業が生き残るために必要な人材像も大きく変化させています。従来の単純作業や定型業務はAIに代替され、人間にはより高度な判断力、創造性、そして柔軟性が求められる時代へと突入しています。このような変化の渦中において、人事部門は単なる管理部門ではなく、組織の変革をリードし、持続的な成長を実現するための戦略的パートナーとしての役割を担う必要があります。

1.多様な人材の採用と育成:未来への投資

 AI時代においては、画一的なスキルセットを持つ人材よりも、多様なバックグラウンドや価値観を持つ人材が組織の競争力を高めます。例えば、異業種での経験を持つ人材は、従来の業界の常識にとらわれない斬新なアイデアやアプローチをもたらす可能性があります。また、海外経験を持つ人材は、グローバルな視点で市場を分析し、多様な文化に対応できる能力を備えているかもしれません。さらに、芸術や人文科学などの分野で活躍した経験を持つ人材は、AIにはない感性や創造性を活かし、新たな価値を生み出すことができるでしょう。

 採用においては、従来の学歴や職歴だけでなく、個人のポテンシャルや多様な経験を重視することが重要です。例えば、プログラミング未経験者であっても、論理的思考力や問題解決能力が高い人材は、AIを活用した新たなサービス開発に貢献できる可能性を秘めています。また、オンラインコミュニティでの活動や、ボランティア経験なども、個人の価値観や社会貢献への意識を評価する上で参考になるでしょう。

 採用後も、多様な人材が能力を最大限に発揮できるよう、育成に力を入れる必要があります。AIに関する知識やスキルを習得するための研修はもちろん、多様な価値観に触れられる機会を提供することも重要です。例えば、社内での異文化交流イベントや、外部のワークショップへの参加を支援することで、社員の視野を広げ、新しい発想を生み出すきっかけを作ることができます。また、メンタリング制度やコーチング制度を導入し、経験豊富な社員が若手社員の成長をサポートすることで、組織全体の能力向上を図ることができます。

2.「潜在能力」に着目した評価制度の構築:未来のリーダーを発掘

 AI時代においては、変化に対応できる柔軟性や、新しい価値を生み出す創造性がより重要になります。そのため、従来の成果主義的な評価制度だけでなく、社員の潜在能力や成長意欲を評価する仕組みを導入する必要があります。

 例えば、個人の成果だけでなく、チームへの貢献度やコミュニケーション能力なども評価対象となり、より多面的な人材評価を行うことが大切です。また、自己評価を導入することで、社員自身の成長に対する意識を高め、主体的なキャリア開発を促すことができます。

 目標設定においても、短期的な成果だけでなく、長期的な成長や、組織への貢献を意識した目標を設定することが重要です。例えば、「AIを活用した新しいビジネスモデルを提案する」といった目標を設定することで、社員の創造性を刺激し、組織全体のイノベーションを促進することができます。また、「チームのコミュニケーションを円滑にするための施策を3つ実施する」といった目標を設定することで、個人の成長だけでなく、組織全体の活性化にも貢献することができます。

 評価結果をフィードバックする際には、単に数値的な評価を伝えるだけでなく、社員の強みや弱みを具体的に伝え、成長を促すためのアドバイスを提供することが重要です。
 例えば、「あなたのプレゼンテーション能力は高く評価されていますが、資料作成にはまだ改善の余地があります。資料作成に関する研修を受講してみてはいかがでしょうか?」といった具体的なフィードバックは、社員の成長意欲を高めることにつながります。また、キャリアパスに関する相談に乗ったり、必要な研修を紹介するなど、社員のキャリア開発を支援することも人事部門の重要な役割です。

まとめ:AI時代の人事の役割:変革をリードする

 AI時代において、人事部門は単なる管理部門ではなく、組織の変革をリードする存在として期待されています。多様な人材の採用と育成、潜在能力に着目した評価制度の構築を通じて、組織の多様性を高め、社員一人ひとりの能力を最大限に引き出すことが、AI時代に生き残るための鍵となります。

 また、AI技術の導入や活用においても、人事部門が中心的な役割を果たす必要があります。AIを活用した人材管理システムの導入や、AIによる採用支援ツールの活用など、人事部門が主体的にAI技術を取り入れることで、業務効率化や人材の最適配置を実現することができます。さらに、AI技術に関する社内研修を実施したり、AI倫理に関するガイドラインを策定するなど、AIと共存するための環境整備も人事部門の重要な役割です。

 AI時代の人事部門は、常に変化を恐れず、新しい技術や知識を積極的に学び、組織の変革を推進していくことが求められます。AIを単なるツールとして捉えるのではなく、組織の成長と社員の幸福を両立させるためのパートナーとして、AIの可能性を最大限に引き出すことが、これからの 人事部門の使命といえるのではないでしょうか。

少人数の多様なプロフェッショナルチームがモダンなオフィスで協力している様子です。異なるバックグラウンドや専門知識を持つメンバーがテーブルを囲んで集中した議論を行っています。オフィスにはオープンスペースがあり、カジュアルな交流を促進するエリアもあります。白板にはクリエイティブなスケッチや付箋が貼られており、「思考の寄り道」を許容する文化が反映されています。また、別の一角では社員が個人プロジェクトに取り組んでおり、個々の創造性や革新性が奨励されていることが示されています。







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