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社員参加型ビジョンワークショップによる未来の実現:いまのたかの組織ラジオ#213

 今野誠一氏(GOOD and MORE)と高野慎一氏(aima)によるユニット『いまのたかの』。マネジメントと組織の現場についてカジュアルに語る、「組織ラジオ」です。

 今回は、第213回目「ビジョンワークショップの実例 ~その過程を通じて“Our Company”が実現する」でした。今回は、今野氏がある顧客の下で実施した「ビジョンワークショップ」についての話でした。

 今回のビジョンワークショップは、会社の将来像を全員で構築するために特別に企画されたもので、会社全体でビジョンを共有し、実現可能な目標を全員で模索することを目的として行われました。この取り組みは通常のビジョン策定方法とは異なり、会社の上層部のみで決定したビジョンを単に社員に伝えるのではなく、会社のさまざまな階層から集まった社員全員が主体的に参加する形式が採用されました。通常、ビジョンや目標の策定は経営層のみが行い、完成した案を社員に伝えることが多いですが、今回のワークショップでは、課長、部長、役員などの異なる役職のメンバーが共に集まり、社長が提案したビジョン案に対して意見や提案を出し合うという形式が取り入れられました。これにより、社員一人ひとりが会社の未来を「自分ごと」として捉え、責任感を持ってビジョンの構築に取り組む姿勢が促されました。会社の方向性を共に作り上げることで、会社全体の一体感が高まり、今後の成長につながる土台を築くことが期待されています。

参加型アプローチとその工夫

 通常、会議や研修は上層部が主導して指示や情報を伝達する場になりがちですが、今回のワークショップでは、社員の自主性や主体的な参加が促されることを重視し、上からの指示を受けるだけではない自由な雰囲気が醸成されました。
 また、事前に社長から配布されたビジョン案も、長い報告書形式ではなく、シンプルでわかりやすい資料として提供されたため、社員たちは各自で内容を読み込み、議論の準備を十分に整えることができました。この事前準備としての資料は詳細すぎず簡潔にまとめられていたため、社員はあらかじめ「良い点」と「改善が望まれる点」を考える余裕を持てました。これにより、ワークショップ当日は各自が熟考した意見を持ち寄り、全員が参加する活発な議論が展開されました。

オブザーバーとしての社長の役割とフラットな議論の実現

 ワークショップには社長もオブザーバーとして参加しましたが、意見交換の際には自らの考えを押し付けることなく、社員たちの意見に耳を傾けることに徹しました。このような社長の姿勢は、社員にとって意見を自由に述べるための安心感を与え、全体の議論がフラットなものとなることを後押ししました。
 通常、社長が会議に参加すると社員が発言しづらくなることが多いですが、今回のワークショップでは、社長が一切の指示を出さず、あくまで意見を聞く側に徹したことで、社員一人ひとりが意見を述べやすい環境が整えられました。結果として、社員たちは一体感を持ちながら意見交換を行い、社長が上から指示を出すのではなく、自らの考えを尊重してもらえるという信頼感が生まれ、組織全体の連帯感が大きく高まりました。
 また、全員で「5年後の理想的な会社の姿」を描き、その理想を実現するために必要な行動を議論したことで、参加者たちはそれぞれの役割や責任を再確認し、自らがどのように会社の未来に貢献するかを具体的に考える機会を得ることができました。

行動計画の策定と職場への持ち帰り

 ワークショップの終盤には、参加者が部門ごとに分かれて、会社のビジョン実現に向けた具体的な行動計画を策定しました。このようにして定められた行動計画は、ワークショップの学びや気づきを会社全体で共有し、職場に持ち帰って日々の業務に活かすための指針となりました。この行動計画は、単なるアイデアの共有ではなく、具体的なアクションステップとして明確に設定され、今後の会社の成長に向けての重要な取り組みとして位置づけられています。また、ワークショップで得た気づきや学びを社員が自主的に周囲に伝えるよう求められたことで、参加者それぞれが「自分ごと」として会社の目標に貢献する意識を強めました。特に今回のワークショップは、通常の業務とは異なる特別な経験として、会社全体の文化を再定義し、組織全体の結束を強化するためのきっかけとなり得るものとして評価されています。

このワークショップをどう考えるか

 このような全社員参加型のワークショップは、社員のエンゲージメント向上に大きく寄与します。経営層が定めたビジョンを単に伝えるだけでなく、社員が自分自身の視点から意見を出し合い、ビジョン構築に積極的に関与する場が提供されたことで、社員にとって会社の未来を「自分ごと」として捉えることが可能になりました。このプロセスを通じて、社員の意見や考えが経営に反映される実感が生まれ、結果として「自分も組織の一部」と感じられるようになります。人事としても、この一体感は長期的なモチベーション維持と離職率の低下につながりやすく、人材確保と定着の面で非常に有用でしょう。

フラットな議論を通じた心理的安全性の確保

 今回、社長がオブザーバーとして発言を控え、全社員がフラットに意見を交換できる環境が整えられていました。いわゆる「心理的安全性」の確保は非常に重要です。心理的安全性が確保されると、社員は上司や経営層に遠慮することなく意見を述べられるようになり、建設的な意見やイノベーティブなアイデアが生まれやすくなります。この安全な場が構築されることで、社員同士の信頼関係が深まり、組織としての強さが増すため、継続的にこうしたフラットな意見交換の場を作ることが重要です。また、上層部が意見を強制せず、率直に意見を聞く姿勢を見せることは、トップダウンに偏らない風通しの良い企業文化の醸成に寄与します。

階層・部門を超えたコミュニケーションと連携の強化

 ワークショップで課長や部長、役員が階層・部門を超えてチームを組み、意見を交わした点も、注目すべきポイントです。普段は直接的に関わる機会が少ない他部門のメンバーと協力し合う経験を通じて、社内でのコミュニケーションが円滑になり、相互理解が深まります。これにより、今後の業務においても部門間の連携が強化され、スムーズなプロジェクト推進が期待されます。人事としては、こうした横断的なコミュニケーションの場を定期的に設け、組織全体の連携をさらに促進することが、企業の成長基盤を強固にするために必要です。

4. 自主性を尊重した行動計画の策定と責任感の醸成

 ワークショップで各部門が今後の行動計画を策定し、それを持ち帰って実践するというプロセスも、社員の自主性を促す上で非常に有効です。社員一人ひとりが自分の考えを反映させた計画を持ち帰り、職場で実践することで、各社員の行動に対する責任感が育まれます。こうした自発的な目標設定は社員の成長を促すだけでなく、組織の一体感を醸成し、企業全体の目標達成に向けた協力体制を強化する役割を果たします。このような行動計画が形骸化しないように、進捗管理の仕組みを整えたり、定期的なフォローアップの機会を設けたりすることが重要です。

5. 企業文化の形成と継続性の確保

 今回のワークショップは、一過性のイベントではなく、企業文化の一部として定着させることが目指されるべきです。こうしたワークショップを単なるイベントに留めず、継続的な取り組みとしていかに組織に定着させていくかが重要な課題です。研修などで一時的に盛り上がっても、実際の業務に戻ると元の状態に戻ってしまうことは良くある話で、今回のワークショップも例外ではありません。そのため、ワークショップで得た気づきを日常業務に取り入れるための仕組みづくりや、参加者が職場に持ち帰った学びを共有する場を設け、企業文化の根付きを支援することが求められます。また、継続的に社員からのフィードバックを収集し、必要に応じて改善や調整を行うことで、ワークショップの意義が長期的に維持されるよう努めることが重要です。

 このように、今回のようなワークショップを通じて得られた一体感や自主性、そして行動計画の実行をサポートし、組織の成長を支える取り組みを継続的に推進していくことが求められます。このプロセスを通じて、より強固な企業文化を育み、全社員が共通のビジョンに向けて一丸となって進むことで、企業全体の持続的な成長が可能となるでしょう。

明るい空間の中で、社員たちが一緒にテーブルを囲んでビジョンを語り合い、和やかな雰囲気が伝わってきます。背後にはCEOが温かく見守り、自由な発言がしやすい環境が整っている様子がわかります。チーム全体の協力とエンゲージメントを感じさせる一枚となっています。



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