少女漂泊~Monologue by HARUKA ν
うっちーって、どういう存在なんだろう
うっちーセンパイ。
あたしがこう呼ぶ男性は、内海耕作という名前だ。
あたしの父親と同じ名前。
叔父の家にしょっちゅう顔を出す、教え子だという。
だから、いつのまにか「お兄ちゃん」のような対象でこの人をみてきた。
別にあたしの直接のセンパイというわけではないけれど
「センパイ」という呼び方が妙に似合う、
飄々とした嫌みのない感じの人だ。
現に、あたしに兄がいたら
こんな感じなのかな~って思うくらい。
憎たらしい系のシンパシーを感じる。
まず、あたしに対しては、ホントに遠慮がなく無頓着な人だ。
だけど、いざというときに、結構頼りになったりする。
あたしが京都の学校を選んだ理由も、
じつはそこにあった。
うっちーセンパイが、実家のある京都で就職する
そう聞いたからだ。
また、部活縛りがない推薦のあった、今の大学が、
あたし自身がこれからもっとも自由に「自分の再構築」が
できることを期待したからでもあった。
で、その肝腎のうっちーですが・・・
あたしのアパートにいきなりやってきて
「はるかちゃん、バイトのシフトの時間まで、ちょいと休ませてや・。」
そう言って、ごろんと横になると。うとうとして、やがていびき。
「・・え?・・。」
まがりなりにも、一人暮らしの女子大生のお部屋ですが・・
どういう神経なのかしら・・。
完全に「妹」扱い・・。
====サイテーな男だなぁ==
確実にそう思ったが、
なぜかイヤじゃない・・・。
あたしは「恋愛」は初めてじゃないし、交際経験もある。
だけど、あたしはいつも相手の男がだんだん頼りなくなってくる。
っていうか、時間がたつにつれ「鬱陶しくなる」んだ。
所有欲・・・っていうのかしら。
あたしをどんどん「縛って」くるのだ。
あたしはあんたの「持ち物じゃない。」
本気でそう思った。
特に「作り物」のあたしに寄ってくる男は
最低最悪だった。
だから、そんな存在にあたしの「はだか」を
提供することなんか、考えもしないことだった。
「はだか」の身体、そして「はだか」の心
あたしはどちらも、自分の「ヴィーナスの貝」の中に
封印しているのかも知れない。
でも、どちらもいっぺんにというのは、
おそらくキセキに近いだろう。
その鍵は、こいつがもしかして握ってるのかな・・?
まさかね・・。
センパイのいびきを聞きながら、実感した。
・・でも・・・なんだかかわいい・・
年上なんだけれど、弟のようにも感じる一瞬がある。
彼は無防備に仰向けでいびきをかきながら熟睡しているのがわかる。
村野の叔父さんがこの状況を知ったら、
こいつは八つ裂きの刑に遭うかも知れないな。
恋愛感情というものではないけれど、その無防備な唇に
あたしの唇を重ねたい衝動に囚われた
・・・え?なに・・あたし何考えてるんだ?
思うより身体が先に動いていた。
あたしは、うっちーセンパイの唇に
自分の唇をそっと重ねていた。