見出し画像

少女漂泊~Monologue by HARUKA  χ

止観・・・?。なんだそりゃ

あたしたちは、六波羅の「御前様のお寺」の前にいた

・・うわ・・・

何か知らないけれどめちゃくちゃ
重要文化財にもなろうかというような
「偉そうな格式高い」感じの寺だった。

・・・あたしなめてたかも・・・・

「はるかちゃん、いこ!」
ニーチェさんはこういうとき、
ホントに冷静で頼りになる。
変な女だけど、マジ好きだ。

「よう来はった、必ず来る思うとった。」

「ひゃっ・・」

いきなり背後から声がした。
あたしもニーチェさんも、
1センチくらい飛び上がる感じで驚いた。

みると、庭で「作務衣姿」で箒を抱えた
「あのけちんぼ坊さん」がそこに立っていたのだ。

 「かかか。そうか、お友達も一緒ちゅうわけやな?」

「はい!よろしゅうご教授お願いします。」

あれ、ニーチェさんが先に言っちゃった。
・・・。何だこの女。

「あ、お願いします・・・。」

あたしの戦意が萎えてしまったではないか、
こいつは坂本龍馬か・・。
まぁ、誘ったのはあたしだから文句は言えない・・。

「わしは、悠雲というもんや、よろしゅうな。」
「浦上はるかです。」
「日江倫子です。」

「 よしよし、ええ名じゃ。
今、若いもんに、先にぐるっと案内させるさかいにな、
庫裡に入って待っててや。」

 そう言って、寺の庫裏に案内されると、
悠雲さんと名乗った、けちんぼ坊さんは、
奥の方に行ってしまった。

(あたし、このお坊さまかなりなめてたかも・・)

と言うくらい、世話役と思わせる僧が、
下足だの案内だの、あたしたちの世話を焼いて
くれていた。

まるでVIP待遇じゃないか・・

 さすがのニーチェさんも、不安がる始末だ。
「こないしてもらって、ええんやろか?」

あたしはかえって不安になった。
このあと、水垢離みずごりするとか、
めちゃくちゃな苦行が待ってるんじゃないか?

やがて、庫裡の一室にあたしたちは案内された。
四畳半くらいの狭い空間だ。

少し高い天窓から、壁に向かってすうっと光が入っている。
真ん中に丸い座布団が二つおかれ、
その先に円形の枠に
インドの文字みたいな模様が一つ描かれた掛け軸がつるしてあった。
そこに光が当たって、
まるで月がそこに浮かび上がっているかのような錯覚を起こした。

そこに作務衣ではなく、法衣をまとった悠雲さんがあらわれた。
ぜんぜん雰囲気が違うので、
ニーチェさんなんかは、手を合わせたくらいだ。

「あんたら、今日は時間どのくらいええか?」
「はい、今日一日大丈夫です。」
「ほうか、そらよかった。」

そう言って、一室の座布団を指さした。
「ほうやな、2時間ほどあそこに座って、止観しなはれ。」

・・・2時間も?・・・あ、座禅みたいなものだろうか。

「そこに座って。目の前の「阿字」を見つめるンや。
ええか? これは宇宙の真理のすべての姿を象徴しておる。
始まりも終わりもなく、ただ、「阿」があるのみや。

これを見つめ見つめ尽くし、
「阿」の中にわれ有り、われの中に「阿」ありと思い、
念ずることや。

まずは、ただ、座って見つめてみるんや・・。
これが止観じゃ。・・・やってみい。」

横を見ると、ニーチェさんは
もうすでに「結跏趺坐」になって、
瞑想に入っていた。

うわ、すごいな・・・。この女。

あたしも、結跏趺坐になり、
目の前の「阿」をじ~っと見つめた。

・・・あれ、思ったより、なんか・・

天窓から指す日の光が、なにかしら・・
うん、いい感じだ。
あたしが自然に解けていくような感じ。

画像1

・・・そうか!・・・


To be CONTINUE


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?