まっすぐの恋
飛鳥はその日、必死で書いた、「生まれてはじめて書いた恋文」を手にして、三軒茶屋の駅のホームにいた。
ずいぶんと時間を使ったが、「怖い男性」という大きなくくりから、「一人の信頼できる男性」というものに心が入れ替えられたのが、自分が手にした「初めての恋文」だった。
渡す相手は・・・・。。
「村野 純」さん・・・・
飛鳥は心に決めていた。でも、相手は、姉の夫と同じ歳の大人・・・。で、あたしはまだ、高校生。・・10歳も年下。彼から見ればまるで子ども。
こんな恋の告白、絶対馬鹿にされるかも知れない。相手にもされないかも。
「でも、あの人、とりあえず、「大学生」だし・・・」
飛鳥はそう決めていた。もう、この人しかいない。
この人以外「愛せない」
三軒茶屋のホームで、村野純は、いつもの5番口乗り場に立っていた。
飛鳥はときめき、遅刻覚悟でホームの反対側に向かった。
「村野さん!」
「お?」
「おはようございます!」
「おはよう、どうした?学校大丈夫?」
「はい、大丈夫です。」
「耕作たちは元気かな?」
「はい、大丈夫です。」
「咲さん、無事退院したんだって?」
「はい、大丈夫です。」
「きみもどう?大丈夫。落ち着いた?」
「はい、大丈夫です。」
やがて、二子玉川行きの電車が入ってきた。
「・・・あ・・」
「じゃ、行ってきます。」
「はい、行ってらっしゃい。」
で、あたしは反対の半蔵門線直通、青山1丁目行きに向かうんだ・
全然大丈夫じゃないよ・・
また渡せなかった・・・・・・・。
しかも、遅刻確定だ・・。