【映画ベスト10】2021年新作映画ベスト10
2021年に公開され、映画館で鑑賞した映画から渾身の力をこめて選出し、自信を持ってお勧めするベスト10です。
1.ドライブ・マイ・カー(Drive My Car 濱口竜介/2021)
ドライブすることと演じることが等価なものとなって車内空間が演劇空間に接続し、車内の座席を巡る的確な切り返しショットが男と女と車によって成立するこの物語をドライブさせ、私たちはアクターたちの間に立ち上がる奇跡を目撃する!
2.偶然と想像 (Wheel of Fortune and Fantasy 濱口竜介/2021)
アクターたちが一対一となって対峙する場面において、偶然と想像がもたらす奇妙な関係性が溶かし込まれ、卓越した演出が魔法のような空間を作り出し、そこを流れる映画の時間はアクターたちが変容していく生の時間に重なって一体化する!
3.モンタナの目撃者(Those Who Wish Me Dead テイラー・シェリダン/2021)
暗闇のはずの森林に燃え盛る炎のオレンジ色が画面を染め、白煙と灰塵が舞い散る中に西部劇を彷彿とさせる硬質なガン・アクションが炸裂し、この映画に刻まれた傷痕をA・ジョリーと少年がラストのクロースアップにおいて引き受ける!
4.新感染半島 ファイナル・ステージ(Peninsula ヨン・サンホ/2020)
闇に覆われた廃墟の街においては光が希望ではなく絶望の徴となり、ノンストップのカーチェイスで車を巧みに操る艶やかに輝く少女の表情はゾンビと車があれば映画ができることを証明し、そのスピードでゾンビ映画を越えていく!
5.ボストン市庁舎(City Hall フレデリック・ワイズマン/2020)
姿を消したかのように振る舞う聡明なキャメラは、会合における多様な声のポリフォニーと多彩な人々のショットによって、そこに解放される絶対的な多様性の下にパッションを産み出し、「身を切る改革」の対極にある民主主義の姿を掴み取る!
6.水を抱く女(Undine クリスティアン・ペツォールト/2020)
恋人たちの出会いと別れといった決定的な全ての出来事が水と共に生起し、そこでは主観ショットがファンタジーのごとく繋がれていき、存在の喪失に見舞われたヒロインの情熱的な愛が奔流する水のごとく画面の中を迸って流れていく!
7.ファイナル・プラン(Honest Thief マーク・ウィリアムズ/2020)
リーアム・ニーソンが過去の犯罪を恋人に告白するシーンが引きのショットとシャローフォーカスの切り返しショットによって彼の誠実で嗄れた佇まいを際立たせ、倫理的存在としてその硬質なアクションを圧倒的な瞬発力の中に輝かせる!
8.愛のまなざしを(Love Mooning 万田邦敏/2019)
閉じられた空間でポジションを変えつつ対話を重ねていく登場人物たちはそこに沸き上がるエモーションを静かに表象し、愛のまなざしに囚われた仲村トオルはラストのカットバックにおいて自らの愛のまなざしを初めて他者に解き放つ!
9.ビーチ・バム まじめに不真面目(The Beach Bum ハーモニー・コリン/2019)
あらゆるショットが互いに平等な関係を形成し、大股開きでタイプライターを打ち、言葉を紡ぐムーンドッグの身体は常に=既に他者に対して開かれ、夕暮れの地平線が作り出すオレンジ色の輝きをその身に浴びて、絶対的な自由へと浮遊する!
10.東京クルド(Tokyo Kurds 日向史有/2021)
キャメラは東京入管のロングショットから亡霊のように鉄格子越しに手を振る収監者にズームアップし、抑圧されてきた者たちの痕跡を消し去ろうとする野蛮な法秩序に対し、その存在そのものを取り出し開くことへと私たちを向き合わせる!
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