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中国のテスラと呼ばれているEVメーカー「Xpeng Motor」のテクノロジーと「NIO」のブランド戦略

以前公開したアフターコロナで台頭する企業を紹介した記事の中で、テスラの海外工場が唯一設置されている中国のEVメーカーについて少し触れました。

政府の助成金を受け、全世界のEV利用者の約30%が集中する最大の市場と言われ、数百のメーカーが鎬を削っている同国のEV業界ですが、新型コロナの影響で生産がストップしたり売り上げが前年を大きく割ったり、更にはテスラが海外工場を上海に設置、中国でのパンデミック終息後もいち早い再稼働に成功し時価総額でトヨタを抜き去るなど、地元メーカーにとっては厳しい状況が続いています。

そんな中で『テスラ・キラー』、『中国のテスラ』と呼ばれ、中国屈指の大企業からの出資を受けている業界の有望株がEVメーカーのXpeng Motor(小鵬汽車)社とNIO(上海蔚来汽車)社です。別名が示す通りテスラのライバル、似た戦略を取っておりテスラのお膝元アメリカでもIPOを申請したりシリコンバレーに拠点を置いてもいます。

テスラが上海工場で生産したセダン『モデル3』は中国のEV販売台数のトップに立っており、同社も今年の6月時点でEV市場のシェア25%を取るなど好調です。そんなEVの巨人テスラのライバルと目される2社について、そのユニークさについて簡単に紹介してみます(∩´∀`)∩

Xpeng Motor(小鵬汽車)

2014年、自動車産業が盛んな広州で創業。
テスラ同様多額のリソースをR&Dに注いでおり、後述するようにテスラを非常に意識したプロダクトを開発、リリースしています。

同社は特にオペレーションシステムへの注力が半端なく、OS開発だけで370名ものエンジニアを抱え、下に紹介する最新モデルは『レベル3』の自動運転を実現しています。『レベル3』は分かりやすく言うと走行中にスマホをいじっていい水準(日本でも今年の4月に公道での走行が解禁されました)。シリコンバレーに開発拠点を抱え、アメリカで先端技術を生み出し母国でマーケットや実用面に即した開発を行うという体制を採ってきました。

出資はアリババやフォックスコンから受けていることで有名ですが、実は2020年6月にアメリカでIPOを申請していたことが分かりました。とはいえ新型コロナの影響は大きく、同社の見通しでは今後2~3年は赤字が続くんだとか。

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Xpenagの代表モデル『P7』は昨年発表され、11月時点で15,000台超の予約が殺到した車種。テスラのセダン『モデル3』にかなり酷似し、航続距離など一部スペックではテスラを超えつつ、価格は『モデル3』の25%に留めています。アメリカ最大の半導体メーカーNVIDA社が開発したAI半導体“Xavier”をトヨタやボルボ等日欧のメーカーに先んじて世界で初めて採用したことでも話題になりました。5つのミリ波レーダー、12の超音波センサー、14のカメラを搭載し毎秒30兆回もの演算で安全性の高い自動運転を実現します。

従来自動車業界の最新テクノロジーは日本や欧米でまず導入されるのがセオリーでしたが、この“Xavier”に代表されるように、今後EV業界では中国、特にXpeng社が真っ先に採用するのが通例になるかも知れません。

テスラのソースコード持ち出し疑惑

昨年2019年3月にテスラを退職しXpengに参加した自動運転の開発エンジニアが、退社前にソースコードを自身のデバイスにダウンロード、しかもそれをXpeng側に渡したとして訴訟を起こしました(テスラのオープンソースを開発に使用したこと自体はXpeng側も公にしています)。当のエンジニアはダウンロードは認めたもののコードは削除したと主張しており、現在も解決の目途は立っていません。

なお『P7』と『モデル3』はWebページのデザインがそっくりで、海外の記事ではよくメインビジュアルの類似性が指摘されています。ホントにそっくりなのでお暇な方は見てみてください(;^ω^)

NIO(上海蔚来汽車)

Xpengと同年に創業されたEVメーカー。拠点は上海になります。

バッテリー交換サービス

Xpengが高い技術力を強みにしているとすれば、NIOは購入後のケアやユーザーコミュニティ形成で突出しています。代表的なのがバッテリー交換サービスです。

EVの歯がゆい点としてバッテリーの劣化がありますが、実は、NIOのオーナーはいつでも好きな時に自車のバッテリーを最新のプロダクトと交換出来るという中々他のEV企業がやりたがらないサービスを2018年から展開していました。何と国内58都市に130を超えるバッテリー交換ポイントを設置しており、今年5月時点で既に50万件以上の交換を実施しているとのこと。無論これはテスラでも達成していません。

ステーションは24時間営業で全自動、交換自体もたった3分で完了するというスマートさ。これ↓が国の至る所にあるって凄い(・・;)

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バッテリー交換ステーションのイメージ(画像:同社HPより)

オーナーで作るコミュニティ

バッテリー交換以上に同社のコーポレート・アイデンティティとも言えるレベルで競合と明確な差異があります。購入後のユーザーコミュニティ形成です。

NIOではオーナー達が参加するアプリを提供しています。アプリではオーナー達の車や日常の写真を投稿するSNSほか、NIOグッズはじめオシャレな日用品を購入できるECサイト、また後述の『NIO HOUSE』で使用できるポイントの獲得など様々な機能があります。いずれもNIOのオーナー達のロイヤリティや帰属意識を高め、リピーターとして再度車を購入しライフタイムバリューを高めることが目的と考えられます。NIOに限らずテスラもXpengも富裕層向けの高級車ですが「ここの車、ここの店のアイテム持ってる俺、イイよね」的な満足感を増幅させるのは確かに効果的ですね。

『NIO HOUSE』は中国国内に7拠点存在するNIOの施設。コワーキング、図書館、カフェ、ギャラリーから子供向けのキャンプ体験スペースなど何でもあるラウンジで、もちろん利用できるのはカーオーナーとその家族、友人のみ。HPを見てもらえれば分かりますが早い話が会員制高級ラウンジで、いわゆるハイクラス層のみ集まるから気の合う人と知り合いコミュニティを形成できるのが魅力となっています。顧客の心を掴んで離さないカスタマーサービスがNIO最大の強みです。

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『NIO HOUSE』の紹介ページ(画像はHPより)

ここまでくるとEV屋ではなくライフスタイルの提案が本業に見えてきますが、実はNIOの購入者の70%はリピーター(2020年3月時点)。テクノロジーではなくNIOのある『暮らし』で顧客の心を掴むという点、EVメーカーでなくても参考になりそうですね。

テスラの圧倒的な強さ

新型コロナや昨年の補助金減額の影響で中国の5月のEV販売台数は昨年比32%マイナス(73,000台)。その中で最も売れたEVはテスラの『モデル3』で、6月には中国の販売EV台数の1/4がテスラの車だったという報告が出ています。全世界で見るとかろうじてNIOが3,400台売れたという形(全メーカー中17位)で、1位のテスラとは7倍以上の差が出ています(こちらは展開規模が違うので当然なのですが)。

NIOは紹介した通りブランディングの面で攻勢に出ている印象ですが、とは言え中国でもハイクラス向けEV=テスラのイメージは強いのが現状。それでもテスラに正面からぶつかっているXpengとNIOが母国のマーケットでどこまでシェアを奪えるのか、そのテクノロジーやユニークなマーケティングはこれからも目が離せません。

参照サイト

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57199850V20C20A3FFE000/
https://asia.nikkei.com/Business/Automobiles/China-s-Tesla-killer-becomes-first-to-use-latest-Nvidia-AI-chip
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/04124/
https://www.greencarreports.com/news/1128364_hey-tesla-china-s-nio-has-completed-500-000-battery-swaps
https://electrek.co/2019/03/21/tesla-chinese-startup-xpeng-stole-autopilot-source-code-former-employee/
https://marketrealist.com/2020/07/loyal-customer-base-support-nio-stocks-meteoric-rise/
https://www.nio.com/en_DE/nio-house
https://www.tesla.com/ja_jp/models
https://en.xiaopeng.com/p7.html
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-07-08/QD592GDWX2PS01
https://seekingalpha.com/article/4356502-ev-company-news-for-month-of-june-2020


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