『ネオンサインと朝日』 第1話
どうも、普段読まないジャンルの漫画を読んでみようと挑戦した結果、『五等分の花嫁』という超ラブコメ漫画にハマってしまった27歳の男、上神です。僕は二乃派です。
今週もオリジナル脚本『3.0 / 5』を更新しようと思ったのですが、先日、松山市で『小説もくもく会』というのに参加させていただき、人生初の小説を書いてみたので、小説の方を公開することにしました。
▼脚本『3.0 / 5』第1話〜はコチラから読めます
なので、今週の脚本は<休載>ということになります。申し訳ありません。
代わりといっては何ですが、小説の方をアップしたので、是非読んでいってください!
人生初小説なので、温かい目と心で読んでいただけると幸いです(早くも言い訳)
ちなみに、内容はほぼノンフィクションです。95%ぐらい。
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『ネオンサインと朝日』 第1話
電車から星を眺めた。
9月30日午後8時、僕は市内電車の中で座っていた。
いつぶりだろうか。久しぶりに星を見た気がする。
綺麗とかロマンチックとか風情があるとか何とも思わなかった。
だって星は星だから。
ただ何となく、今夜の”通勤時間”は星空を眺めていた。
ふと周りの乗客を見渡してみた。
スマホ片手にゲームしたり、動画を見てたり、誰かとメールをしてたり。
一方、僕はただただ星を眺めていた。僕は一体何をしているのか。
「ブーッブーッブーッ……」
携帯のバイブレーションが鳴っている。
お客さんから連絡が来ていた。
「今日(お店に)入ってる?」と。
すぐに連絡を返そうと思ったが、思わず手を止めた。
僕は大学生ながらバーテンダーのバイトをしていた。
週1勤務のバーテンダーの『バイト』は、いつの日か、人手不足というベタな理由から週5〜6の『レギュラー』に格上げされていた。これは格上げなのか。
毎日が二日酔いで、身体もボロボロだった。早朝、仕事終わりの状態で大学に着くと、大学の構内で、友人に「え?大丈夫か、顔色めっちゃやばいぞ…」と心配される。これで大丈夫なワケがない。
『血を吐くほど、努力しろ』とよくいうが、本当に血を吐いた奴はいるのだろうか。覚えている範囲で言えば、3回血を吐いた。食事中の方すみません。
でも「全然大丈夫よ!まぁ今も普通に酔っ払ってるけどネ〜(ニコッ」と、笑ってごまかす。果たしてこれで誤魔化しきれているのだろうか。
さっきのメールに戻る。
「今日入ってる?」というメールに「入ってるよ」ってすぐに返信するつもりだったが、手を止めた。
二日酔いで身体がボロボロだから手を止めたのか、めんどくさくなって手を止めたのか、いっそ「入っていない」とウソをつこうかと悩んだのか、理由は忘れた。
ただただ目の前にある『小さな暇つぶし』を眺めた。
大学生でバーテンダーだから、周りの大学生からはうらやましいと言われたこともある。
出会いも多いし、お酒をタダで飲めるし、正直モテるし……
普通の大学生じゃ味わえないような、"おいしい"体験を何度もさせてもらった。おかげで大学を2年も留年するという本末転倒っぷりも味わったが。
そして今日は、そのおいしい体験とはまた別の『特別な体験』が待っている。
明日は僕の24回目の誕生日だ。
厳密に言えば、あと数時間後に『誕生日』を迎えてしまう。
子供の頃、誕生日が近づくといつも心が躍っていた。
年齢分のろうそくがついたケーキを家族みんなでシェアして食べた。
母親が『いつも通りで定番の、でもちょっと味付けされた、誕生日プレゼント』を毎年渡してくれた。
毎日が誕生日になればいいな、と心から思っていた。
でもいつの日か、僕は誕生日を特別な日と認識しなくなっていた。もしかすると、バーテンダーになってから心境が変わったのかも。
電車を降りた。歩いていると、街はネオンサインと大勢の人で溢れていた。
普段は気にも留めない風景だったが、その日は『特別な日』だからか、何だかいつもと少し違って見えた。
まるで、もうすぐ迎える『特別な日』を祝福してくれているような、でもどこか他人事のように無機質で冷めているような。
モヤモヤした感情が一向に止まらない。
でも一つ気付いたことがある。
電車でネオンサインじゃなく星を眺めた理由だ。
電車で見た『小さな暇つぶし』は、僕にとって身近な現実逃避ツールだったのだ。夜空に輝く星空は、恋人と眺めたら『光り輝く大きなオブジェ』だが、今日見た時は『ただの小さな暇つぶし』だった。何とも不思議な光景だ。
少し歩いた後、お店に着いた。
お店の開店準備をしていたら、オーナーからメールが届いた。
「明日も(お店に)入る予定になってるけど、学校は大丈夫なんか?」
そう。通常通りでいえば、明日は休みだった。休みのはずだった。
しかし、明日は僕の誕生日だ。休めるはずがない。
主役がいない誕生日会など聞いたことがない。主役が休むという選択肢があるはずがない……と。
正直、誕生日にお店に入った所で、特別な成果報酬(ギャラ)がある訳でもないし、僕にとって大きなメリットはない。
でも、もしお客さんが自分の誕生日をわざわざお祝いに来てくださった時、主役の自分が休みだと、どんな反応をするか。それにお客さんからの信用を落としたくない、という変に真面目な所もあった。
そもそも、お客さんがわざわざ誕生日に僕のためにお店に来てくれる、という事実が普通に素直に嬉しい。昨年は、高いシャンパンを下ろしてくれたり、ひたすらビールを飲ませてくれたり、わざわざケーキを買ってきてくれたり、とにかくお酒とプレゼントのオンパレードだった。まさに主役だった。
結果、その”誕生日で祝ってもらったお酒代”は、ほとんどオーナーの元に入るが、僕は僕で素直に嬉しかったし、まぁ別にいいか、という軽い感じだった。”その当時”は。
しかし、お店に入って3年目の誕生日に「明日も店に入る予定になってるけど、学校は大丈夫なんか?」という返信メールには、愕然とした。
オーナーは、僕の誕生日の日なんか全く覚えていない。眼中にもないのだろうか。
それはそうだ、自分にとっては何でもない、ごく平凡な一日だ。強いて言えば、『半自動的にいつもより多めのお金が入る日』だ。
いわば、特別ボーナスみたいな日。現場でせっせと働いているのは僕だけど。
ちなみに、同じ”レギュラー”の人(年上だけどキャリアは自分の方が先輩)にも一応、確認として聞いてみた。
「オーナー、俺の誕生日覚えてないんかな…?」
「うん、覚えているワケないやん(笑)」
と、軽く笑われた。でしょうね。聞いた僕がバカだった。
というような、多少の苛立ちやショックはあったものの、その溢れる感情をグッと抑え、冷静にこう返信した。
「明日は僕の誕生日で、何組か予定があるので入ります」
誕生日についてもさりげなく触れ、休みなのにわざわざお店に入る理由も簡潔に答えた。自分でもこれ以上にないベストなメールをした、と自画自賛した。しかし、後に気付く。ここで”重大なミス”をやってしまっているということを……。
オーナーからすぐさま返信が来た。えらい早いな。
何て返信来るんだろうと思ってパッと携帯見たら、こう書かれていた。
「ちゃんと営業したんか?」
頭のモヤモヤが一瞬にして吹き飛んだ。
そして、ハッと気付かされた。
僕はこのお店をすぐにでも辞めた方がいい、と。
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ここで、第1話は終了です。第2話の公開は未定です。
来週(6/10)は脚本の方を頑張ります。よろしくどうぞ。