丸投げは優しさと思ってた事
「トーヤ、あん時のプロジェクト無責任だったよなぁ(笑)」
笑いながら言われたけどもマジでムカついた!
顔を引きつらせながら
え、ど、どこが無責任だったんかねぇ…
と聞いた。
だって、一生懸命やったしチームの事を考えてやったつもりだった。
ただ、技術的な部分は分からないところが多く、チームの人間に頼ってる事が多かったのは間違いない。
とは言え、責任はリーダーとして取ってたつもりだ。
「ほら、〇〇の機能の事でチームメイトから相談されたでしょ?
あの時、トーヤは分からないからって全部任せたよねぇ」
いや、そりゃそうでしょ。
分からんもんは分からんのですもん。
「あとさ、最後にA案とB案のどちらが良いか決めて欲しいって言われたでしょ?
あの時もどっちでも良いって言ったじゃん」
いや、だからその分野は詳しくないから決めて貰っていいよ、って意味じゃん。
「あれさ、トーヤが専門じゃないって分かってるのに相談してきたよね」
そうそう!
寧ろ、それがおかしいと思わない?
俺が分かる事で相談してくるなら分かるけどさ。
「それって真剣に考えた?
分からないからって理由で”考える事”すらしなかったんじゃない?」
そう言えば…頭っから自分自身”知らない”とか”専門外”って思って考える事すらしなかったな。
「実はね、あれは専門的な要素を含んではいるけど相談内容はトーヤでも理解できるものだったんだよ」
マジか!
それは申し訳ない事をしてしまった…
「更にね、決定して欲しい時も同じなんだけど第3者の意見が欲しかったんだよ」
それならそう言ってよ。
でも、好きにさせて貰った方がやりやすいって事もあるじゃん!
だから、俺みたいなやつが口出しせずに自由にして欲しいって思ったのよ。
俺は責任だけ取ればいいじゃない♪
「責任ってどうやって取るの?
専門外の事でしょ?
何かあった時に説明できる?
できないでしょ?
頭下げるだけでどうにかなる事ばかりじゃないよ」
確かにそうだ。
何かあったら結局チームメイトの力を借りないといけない。
「それと一番大切な事が抜けてる。
”トーヤを信頼したからチームメイトがトーヤを頼ってる”
にも関わらず、それを分からないという理由で相談にも向き合わず、決定もしない行為はただの丸投げ以外の他にならない」
もう、言葉が出なかった。
心の中で何度も何度もごめんなさいを言った。
自由奔放に仕事をして貰ってると思ってた。
それが良い事だと考えてた。
それが優しさだと考えてた。
全然チームじゃなかった。
全然チームメイトを信じてなかった。
ただ、この件を笑いながら言って貰えた。
次の仕事は頑張ろうと言って貰えた。
それはまだまだ信頼してくれてるから、そう思った。
それは過去の事でこれからが大切な事なんだ、そう言ってくれてると思った。
その場から離れて改めて考えた。
これだけ酷い事をしてたのに、ほんのさっきまで全く自覚がなかった。
それどころか良い事をしてたと思ってすらいた。
恩こそ受けても恨まれる事なんて一つもないと思っていた。
こんな勘違いををひとりで気付けるのだろうか?
誰かに言われなくて気付くことが出来るのだろうか?
改めて「言われるうちが花」を胸に刻んだ。
本当にありがたい言葉だった。
多分、同様に酷い事を身近な親や娘にもしてるだろう。
これをきっかけに似たような事がないかを探そうと思う。
とは言え、探しても見つからないだろう。
見つかるもんならさっきの件も見つけられてるはず。
だから、少なくとも「言われるうち」だけは保てるように生きていきたいと思う。
なんだろ、30年前に言われた言葉がリフレインしてる。
『トーヤ、お前ももう少し態度をどうかしたら可愛がられるのにな』