パフォーマンス「多和田葉子と高瀬アキ パフォーマンス『機械仕掛けの歌姫』」(於 小野記念講堂)
早稲田の学内にある国際文学館、いわゆる村上春樹ライブラリーが3周年を迎え、記念のイベントを開催していた。そのなかのひとつが、小説家 多和田葉子とピアニスト 高瀬アキのパフォーマンス。フランスの作曲家ジャック・オッフェンバックのオペラ『ホフマン物語』に基づいて、多和田が創作文を朗読し、高瀬がピアノを奏でる。そこにはオペラ歌手が入る予定だったのだが、急遽、ボーカル(というか、声出す役)として赤い日ル女という方が参加した。
なかなかおもしろい。芸術活動として、こういう組み合わせもありなんだという新鮮な驚きだった。多和田の創作文は少々幻想的で、ちょっと村上春樹の小説に似ていると思った。また朗読の滑舌がとてもよく、声が通る。これだけで観客に聴かせる。
「か、かっ、ひらがなの、か、・・・」
一方、高瀬のピアノは自由奔放。プロコフィエルからの引用が続くと思ったら、自分のオリジナルメロディも弾いたよう。そして赤いの予想がつかない声が、至るところに響いていく。
不思議な経験だった。1時間ほど異世界に漂っていた感じだった。パフォーマンス後に松永美穂教授の司会によるトークがあったので、異世界から戻ってくることができた。
わたし的にもっともうれしかったのは、パフォーマンスの最後、高瀬のピアノがカーラ・ブレイを奏でたところだった。夫のポール・ブレイの曲の方が頻繁に聴くけれど、カーラは昨年亡くなってしまい、残念だった。パフォーマンスの最後を穏やかに締めくくるのに、カーラの曲はぴったりだった。