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映画「僕たちの哲学教室 」(Young Plato, 2021, アイルランド・英・ベルギー・仏, 監督 Neasa Ní Chianain and Declan McGrath)


小学校はどこも問題満載。子どもたちの間でいざこざは絶えないし、教師にたてつく子もいる。そんな小学校をいかにまとめていけばよいのか。

ケビン先生は校長先生として、そんな子どもたちに哲学を教える。「みんなが怒りを収める方法を教えてくれ。哲学者のセネカの考えと比べてみよう」などと。問題を起こした生徒は、小さな部屋にある「思索の壁」へ呼び出す。そこで、なぜ友達をなぐってしまったのか。これからどうしたらよいかをホワイトボードに書きながら哲学の観点から考えていく。

なるほど、哲学は今の私たちの人生に指針を与えてくれる生きた学問なのだ。間違っても、過去の哲学者の言ったことを丸覚えするための教科ではないのだ。

ケビン先生が哲学の授業をするのは、かなり意外だった。たとえばフランスの学校なら、正式の受験教科にもなっているから哲学でもよくわかる。しかしここは英国の一部なのだ。

しかし、ここでは哲学は必要なのだ。ここは英国といっても北アイルランドのベルファスト。それも、過去にカトリックとプロテスタントが衝突したカトリック側の労働者居住地区。ところどころ、家の壁には英国からの独立を主張するプロパガンダ壁画が描かれている。子どもたちの不安定さやいざこざの多さも、過去の社会的な紛争に帰因しているような気がする。

しかし、ケビン先生のような逸材がいれば、生徒たちも親たちも心強いだろう。校長室に哲学者たちの顔写真と言葉が、これでもかこれでもかと貼ってある。いや、それだけではない。時間を作り、マシンで身体を鍛えている。いやいや、それだけではない。部屋には哲学者グッズとともにエルヴィス・プレスリーグッズがあふれている。ケビン先生はプレスリーファンなのだ。

哲学者とプレスリーの不思議な共存に興味を引かれつつ、ケビン先生の忙しい毎日に見入ってしまった。北アイルランドの教育現場のドキュメンタリーを見られて、幸運だったと心底思った。学校横に完成した「哲学」の壁画は、子どもたちの「平和」に必ず寄与することだろう。

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