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重力探査

 引力(gravitation)と重力(gravity)はよく混同されて使われていますが、明確な違いがあります。引力は、ニュートンの万有引力の法則で示されているように、2つの物質の間に働くグローバルな力で、2つの物質の質量に比例し、逆二乗則と呼ばれるように2つの物質の間の距離の二乗に反比例します。一方、重力はローカルな力であり、地球の質量による引力と地球の自転による遠心力の合力として表されます。高校の物理の教科書では重力は地球上どこでも同じと習いますが、実はそうではありません。 地球の自転による遠心力は、自転軸からの距離によって変わるので、緯度によってその値が変わります。赤道では回転半径が赤道半径と等しいため遠心力が最も大きく、その大きさは引力の1/300程度となります。最も遠心力の小さい地点は北極点および南極点で、遠心力は0となります。つまり、重力は両極点で最大値となり、遠心力が逆向きに働く赤道で最小値となります。

 地球の引力自体も厳密に言えば一定ではありません。地球は様々な物質で構成されていて、鉛直方向にも水平方向にも密度は変化しています。地球は大きく分けて地殻マントルの3つに分けられますが、それぞれ密度が大きく異なり、地球の中心部の核で最も大きく、地表付近の地殻が最も小さくなっています。鉛直方向だけの密度変化なら、引力の大きさは場所によって変化しませんが、規模の大小はありますが水平方向にも密度が変わるため、場所によって引力そのものが変化しています。例えば断層のように水平方向に大きな地層の段差があれば断層を挟んで引力が変化しますし、鍾乳洞のような地下の空洞は周囲の岩石と比べて密度が小さいので、空洞上部で引力が変わります。 重力探査は地表下の密度の不均一性に着目した探査方法で、地下の密度分布から地下構造や地下資源の存在を推定します。

 重力探査は,地下を構成する土壌や岩石の密度差を利用して地下構造を調査する方法で,広域の地下構造を迅速に調査するための概査法として,主に堆積盆地の広がりや堆積層の層厚,地質構造の概要を知るために用いられてきました。 地表での重力値は,地下に分布する岩石・岩盤の密度,分布深度,形状に大きく依存します。地下に密度の同じ岩盤が存在する場合,出現深度が浅いと地表の重力値は大きく測定され,逆に地下に空洞が存在する場合には重力値は小さく測定されます。 重力探査の測点は,適切な精度の測量を行って水準や位置を定めておく必要があります。また,測定エリアには重力測定の基準点を設け,数時間ごとに基準点で重力を測定して各測点での時間的なドリフトを補正します。最終的な重力異常を求めるためには,高度補正フリーエア補正ブーゲー補正などの多くのデータ補正が必要となります。


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