コラム#9A ヘビの熱赤外線センサ
生物には視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚がありますが,ヘビには他の生物には無い六番目の感覚があります.それは熱を感じる感覚で,ヘビにはそのための特殊な感覚器官があります.この器官には多くの神経や毛細血管が集まっていて,わずかな熱でも感じ取ることができます.
ピット器官(pit organ)と呼ばれるこの感覚器官は,軍用機器並みに高性能だそうです.ヘビの眼と鼻の間にある凹みには熱センサがあり,このくぼみの中には,15万個にも及ぶ熱感受性細胞がびっしりと並んでいます.この細胞の集中度が,温度感覚に大きな増幅効果をもたらします.その精度は数十cm離れたものの温度変化を0.1℃単位で知ることができるそうです.
最近の研究では,ヘビは熱を感じるだけではなく,赤外線カメラの映像のように見えていて,距離までも認識しているのでないかと考えられています.ヘビは,暗闇の中でも頭をあちこち動かして,温度を持った獲物の大きさや形を、サーモグラフィのように”見る”ことができるのです.