世界”物探”遺産の旅#6 グァラパリ
ブラジルのグァラパリは、有名な観光地の一つで、美しい曲線を描く白い砂浜で知られています。ここでは、海岸線に面した土地は隙間なく開発されていて、高層建築が建ち並んでいます。市内にはセチバ自然保護区が設定されていて、カメや鳥などの原始的な沿岸生態系の保護が行なわれています。
実はグァラパリは、世界でも有数の自然放射線量の高い地域としても知られています。グァラパリの周辺地域には、放射性物質を含むモナザイト(モナズ石)が多く埋蔵されており、このモナザイトが砂として海岸に堆積したために、自然放射線量が高くなったと考えられています。モナザイトは、放射性核種であるトリウムやウランを含むことが多く、そのために弱い放射能を持ちます。グァラパリでの一人当たりの被照射線量は年間0.9~28mGyで、平均では5.5mGyです。
この地域は自然放射線量が高いものの、有意な健康への影響は確認出来なかった等の調査報告もあり、日本においては電力会社が自然放射線量及び原子力発電所の安全性を説明する場合において、この都市を事例の一つに用いる場合もありました。しかしその一方で、内部被曝によるものと思われる末梢血リンパ球の染色体異常や、対照地域に比べて癌の死亡率が高いとする調査報告もあります。一体どちらが、本当なのでしょうか?。
グァラパリと同様に自然放射線量の高い場所に、ラムサール条約で有名なイランのサムサールがあります。ラムサール条約は、1971年2月2日にイランのラムサールという都市で開催された国際会議で採択された、湿地に関する条約です。正式名称は、『特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約』といいますが、この条約が採択された場所にちなみ、一般にはラムサール条約と呼ばれています。
日本ではラムサールと呼称していますが、現地の発音ではラームサルの方が近いようです。ラームサルは、温泉、アルボルズ山脈の森林、モハンマド・レザー・シャーの宮殿などを併せ持つ海岸リゾートで、王政の時代にはイランを訪れるアメリカ人に良く知られた保養地でした。ラームサル市内の数カ所は、世界でもっとも自然放射線が集中する箇所で、これは温泉の発するものである。ラームサルにおける1年間あたりの被照射線量は、そのピークで260mGyに達するといわれているので、ピーク値はグァラパリの約10倍です。