ミリしら物理探査#32 季節を選ぶ地温探査
物理探査は、基本的には時間と場所を選びませんが、地温探査だけは例外です。最も一般的な地温探査に、1m深地温探査があります。この探査法は、その名前からもわかるように、地下1mの深さでの温度(地温)を測定します。1m深地温探査の目的は、地中の”水みち”の探査です。
”水みち”は、地下の透水性が高い部分を指します。地下水は地下に一様に分布しているのではなく、透水性の高い部分を選択的に移動します。そのため、同じ深さの地下でも、水が多い部分と水がほとんどない部分があります。
地温探査では1-2℃程度の小さな温度差を測定します。この温度差は、地下の熱伝導率の違いや、”水みち”の存在などと関係しています。地下水温度は年間を通して14-15℃程度ですから、周囲の地下温度とのコントラストが十分大きな場合に、温度差が大きくなります。気温が地下水温度と同程度の春や秋では、地中の温度もその影響を受けて、地下水と同程度の地温となります。こうなると、地面の温度と地下水の温度がほぼ同じなので、温度差が小さくなります。
つまり、人間にはちょうど良い季節である春や秋には、地温探査は能力を発揮できません。その逆に、人間があまり得意ではない厳寒期(冬)や厳暑期(夏)には、外気温と地下水温度の差が大きいので、地温探査には最適な時期となります。地温探査は、季節を選ぶ珍しい探査法なのです。