アンサング偉人伝#13 NASAを支えたキャサリン・ジョンソン
見たくて録画してたのに、見るのを忘れていた映画をようやく見ました。邦題は『ドリーム』という黒人女性たちの活躍を描いた2016年の映画です。この映画の原題は『Hidden Figures』で、意訳すれば”隠れた偉人達”みたいな意味となるので、この記事のテーマである”アンサング偉人伝”にぴったりです。
かつてNASAには、人類による宇宙飛行を成功させるため、大量の複雑な計算を行なう”計算人(computer)”がいました。この映画の主人公であるキャサリン・ジョンソンもその一人でした。キャサリンは、アフリカ系アメリカ人の限られた教育機会を最大限に活用し、18歳で大学を卒業した天才少女です。しかし、当時のアメリカでは人種差別が公然と行われていたので、黒人で、しかも女性である彼女の才能が生かせる職場はありませんでした。映画の中にも描かれていますが、60年前のアメリカでは『非白人専用』のトイレ、図書館・裁判所・バスなどでの差別的な人種隔離が公然と行われていました。
キャサリンは1952年に”コンピューター”として航空学の分野で働き始め、NASA設立後は米バージニア州ハンプトンにあるNASAのラングレー研究所で有人宇宙飛行のために働きました。最初は白人男性優位の中で大変苦労しますが、彼女の能力は次第に認められ、後に国会議員になった宇宙飛行士ジョン・グレンを地球周回軌道に乗せるプロジェクトで大活躍しました。その後も、アポロ計画で月に送るための計算も担当し、NASAのプロジェクトを陰で支えました。これらの業績が認められ、2015年に大統領自由勲章を授与され、その翌年の書籍&長編映画によって彼女の物語が明るみに出ました。彼女は2020年2月24日、101歳で長寿を全うしました。
映画『ドリーム』ではキャサリンの他にも、彼女の友人であるメアリー・ジャクソン(後に黒人女性初のNASAエンジニア)や、ドロシー・ヴォーン(後に黒人女性初のNASA管理職)が出てきます。ドロシーとメアリーもキャサリンと同じく、黒人女性であるというだけで理不尽な境遇に立たされますが、それでも3人はひたむきに夢を追い続け、やがてNASAの歴史的な偉業に携わることになります。
この映画は彼女たちのサクセスストーリーであり、ソ連(当時)に追い付こうとしたアメリカの宇宙進出でのサクセスストーリーです。それと同時に、理不尽な差別と闘いながら自由を勝ち取っていく、社会への挑戦ストーリーでもあります。映画では3人を中心に描かれていますが、彼女たちの以外にも歴史の陰に隠れた同僚たちが数多くいました。ドロシーは彼女たちのリーダー役で、NASAに”機械のコンピューター”が導入されると、いち早くコンピュータ言語FORTRANの学習をみんなに勧め、彼女ら”人間コンピューター”の解雇を阻止します。
これ以上書くと映画のネタバレになりますが、ネタバレしても関係ないほど面白い映画です。久しぶりに感動して、涙腺が緩みました。「全米が泣いた!」かどうかは知りませんが、間違いなく感動できる映画です。