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ミリしら物理探査#31 地中レーダ

 地中レーダは英語では、Ground Penetrating Radarなので、GPRと省略されます。昔は地下レーダとも呼ばれていましたが、最近は”地中レーダ”と言う用語で統一されつつあります。レーダ(radar)の英語綴りは”rader”のように間違う人が多いのですが、radarという単語自体が”radio detection and ranging”の略語であることを知っていれば、間違うことはありません。

 地中レーダの原理をわかりやすく言えば、”ヤマビコ”です。遠くの山に向かって「ヤッホー」というと、山の方から「ヤッホー」という反響音が返ってくる、例の現象です。昔の日本では、妖怪・山彦が叫び返していると考えられていましたが、もちろんそうではありません。これは、音波が山肌で反射して、その反射音を聞いているわけです。このような反響音による定位は、クジラ類や小型のコウモリなどが進化の過程で獲得しています。これを反響定位(echo location)と言います。

 人工的な反響定位は、潜水艦のソナーや魚群探知機などで使われています。イルカ・コウモリ・潜水艦などの反響定位は音波/超音波が基本ですが、地中レーダでは電磁波が使われます。電磁波は電場と磁場の振動が伝播するタイプの波動現象ですから、音波と違って媒質は必要なく、真空中でも伝播します。むしろ、伝播経路に物質があると電磁波の振動が邪魔されて、電磁波速度は遅くなります。遅くなる度合いは、物質が持つ比誘電率や比透磁率に依存しています。強磁性体をあまり含まない通常の岩石や土壌では、比透磁率は1と考えて良いので、比誘電率が地中レーダでは有効なパラメータとなります。

 地中レーダでは、送信アンテナから電磁波を放射すると、比誘電率が異なる異常体が存在する場所で、電磁波の反射が生じます。この反射してきた電磁波を受信アンテナで捉え、その往復経過時間から、異常体の位置や深さが推定できます。

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