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密かに眠る氷底湖

 氷底湖(subglacial lake)は、氷河の下にある湖のことです。南極大陸には大小の氷底湖が数多くあるそうです。2010年の時点で分かっている氷底湖の内で一番大きいのは、南極大陸にあるボストーク湖です。

 ボストーク湖はロシアのボストーク基地に近い、南緯77度、東経105度地点の氷床下約3.8kmにあります。最も広い場所で幅40km、長さ250kmにも達します。湖の総面積は約1万4,000 平方kmで、これは、琵琶湖の20倍以上の面積です。こんな大きな湖が、南極の氷の下に埋まっています。ボストーク湖は、1960年代後半から70年代初頭にかけて行なわれた上空からの氷透過レーダによる調査で、その存在が確認されました。

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 ボストーク湖の水面までの深さは、3,800mもあります。つまり、少なくとも3,800m掘らないと、湖面まで到達しません。ボストーク湖の湖水の平均温度はー3℃なので、地表なら凍っている温度ですが、湖の上側を覆う氷の重さによる高圧のために液体状態を保っている(圧力による凝固点降下)説と、湖底が地熱によって温められ、分厚い氷床が断熱材の役割を果たしている説があります。

 1998年にロシア・フランス・米国の共同チームが、湖面までもう少しの深度3,628mの地点までコア掘削とその分析を行ないました。この場合のコアとは、掘削によって採れる氷のサンプルです。湖の頂上付近で採取されたコアを分析した結果、その氷は約42万年前にできたものと分かりました。つまり、この湖は約50万年にわたって氷で封印されていた事がわかりました。50万年といえば、まだ原人の時代で、ホモサピエンスは地球上には登場していません。この時の掘削では、湖水の汚染を防止するために、氷床と湖水の境界面まであと120mの地点で掘削が停止されました。

 2005年5月、湖の湖底の中央に島(山?)があることがわかりました。この島によって湖は、二つの水盆(水深の深い場所)に分かれています。北側の水盆は約400m、南側の水盆では800mの水深があります。総貯水量は5,400 立方kmで、水は淡水であると推測されています。2013年2月、ロシア北極南極科学調査研究所の調査隊が、氷床を深さ約3,800メートルまで掘削し、1989年の掘削開始以来初めてドリルの先端が湖に達したと発表しました。

 まだまだ地球は謎だらけです。50万年もの長い間、静かに眠っていた湖の研究は、これからが本番です。


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