ボルタとアンペール
イタリアの医師/物理学者であるガルバーニが、カエルの筋肉を使った実験で偶然発見した”動物電気”に強い関心をもったのが、同じイタリアの物理学者であるボルタでした。ボルタは、動物電気の研究をしていく中、2種類の金属(亜鉛や銅など)で舌をはさむと、ピリピリとした刺激とともに、変な味覚を感じたことなどから、この電気は動物に由来するのではなく、異なった金属の接触により電気が発生したのではと考えるようになりました。
現代の化学を習った高校生なら、イオン化傾向の違いから生じる電気だということは分かるのですが、当時のボルタにはそんなことは分かりません。ボルタは、カエルの脚が動くのは、異種金属間に発生した電気による刺激だと仮説を立てました。ボルタは、この仮説を実証するため、塩水で湿らせた布をはさみながら、銅板と亜鉛板を交互に積み重ねた装置『ボルタの電堆を考案しました(1799年)。さらに翌年には、希硫酸のはいった容器を亜鉛と銅の電極でつないだ『ボルタの電池』も考案しました。
このボルタの電池は、歴史的な大発明でした。ボルタの電池以前の電気と言えば、ライデン瓶に貯められた静電気でした。しかし、ボルタの電池が発明されたことによって、はじめて持続的に流れる電気=電流が利用できるようになりました。車に使われているカーバッテリーは、基本的な仕組みはボルタの電池と変わりません。ボルタの電池が無ければ、その後の電磁気に関する様々な現象は発見できなかったでしょう。
フランスのアンペールは、エルステッドが偶然発見した電流の磁気作用に関心を持って、それに関する法則を発見し、数式としても記述しました。これが後に、電気工学の理論的発展に大きく貢献しました。また、アンペールは着眼点が鋭く、電流の磁気作用は地球の地磁気と関係しているのではないかと仮説を立てました。地球を巨大な磁石と考えると、北磁極は磁石のS極、南磁極は磁石のN極となっています。この事実と右ネジの法則から、地球には自転方向と逆(西回り)の電流が流れていると考えました。
ボルタとアンペールなしでは、電磁気学は発展しませんでした。また、私の研究分野である電気探査や電磁探査があるのは、ボルタやアンペールのお陰です。ボルタの名前は電圧の単位・ボルト(V) に、アンペールの名前は電流の単位・アンペア(A)に使われています。