地中レーダ探査
反響定位(エコロケーション)とは,動物が自ら発した音が何かにぶつかって反射してきた音を受信して対象物までの位置を知ることです。それぞれの方向からの反響を受信すれば,そこから周囲のものの位置関係,それに対する自分の距離を知ることができます。最も有名なのは,哺乳類なのに空を飛べるコウモリです。コウモリは自身の出す超音波の反射時間から餌(蛾など)までの距離と方向を知ることができます。ところで野生動物だけの驚異的能力と考えられていた反響定位ですが,これを自在に行なう全盲の男性がCNNやナショナルジオグラフィックで紹介されています。彼はクリック音(舌打ち音)を頼りに,離れた場所にあるものの形や距離を正確に判断しています。実験によるとその能力は高く,反響定位を行なっている時は脳の視覚を司る分野が活発に働いているということです。つまりこの男性は,音で物を"可視化"しているのです。蛇足ですが,反響定位のできる盲目の犬もいるようです。
地中レーダ探査は電磁波の反射,屈折,透過現象を利用して地中の構造を把握する手法です。地表のアンテナ(送信機)から電磁波を地中に放射し,地中の電磁気的性質の異なる境界面等で反射した電磁波をアンテナ(受信機)で計測します。地中レーダ探査では通常,数10MHz~数GHzのパルス状の電磁波を使います。計測した反射波を連続的に並べると,電磁波による反射断面図が作成できます。この反射断面図から反射面までの深さや反射面の広がりを解釈することで,測線に沿った地下構造が推定できます。また複数の測線データから時間毎(深度毎)の平面図を作成すれば,地下構造の水平分布が推定できます。このように地中レーダでは,電磁波を使って地下を可視化します。地中レーダは通常,埋設管や空洞,コンクリート構造物中の鉄筋調査等で有効な方法ですが,近年では地雷探査や考古学的な調査にも利用されています。
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