「見える化」と「見えない化」
科学技術では、”見える化”と”見えない化”の両方が必要です。見える化は、ちょっと難しく言うと、”可視化”と言います。可視化とは、目に見えない事象や現象を、映像やグラフ・表などにしてわかりやすく目に見える形にすることです。ビジネスなどでは、ビッグデータを駆使して顧客ニーズや顧客満足度などを可視化し、現状把握や業務効率化などを図ります。最近流行りのAIを使えば、色々な分析もできます。
私は、「地球の可視化」を研究しています。地球と言っても、地球全体ではなく、研究対象は地球の表層です。私が興味があるのは、地下資源などが採掘可能な地下数kmの所までです。石油・天然ガス、地熱などのエネルギー資源は偏在していて、掘り出したり利用したりするためには、どこのあるかを効率的に探す必要があります。そこで役立つのが、私が研究している物理探査学です。
物理探査には様々な方法がありますが、そのなかでも私の専門は電気探査や電磁探査です。電磁探査は電磁場の変動を利用する方法で、電磁場の周波数応答や時間応答から、地下の導電率の分布が推定できます。導電率は、電気の流れやすさを表わす物理量です。地下の導電率の三次元分布がわかると、地下が可視化できます。地面の下は誰も見ることは出来ませんが、眼に代わるセンサを使えば可視化できます。
見える化/可視化はもちろん大事ですが、見えない化も大事です。インターネットが普及して、誰とでも繋がれる社会になりました。世の中が善人だけで構成されていれば安心なのですが、中には不心得者もいます。そんな悪い人から身を守るためには、ネットセキュリティを意識する必要があります。このセキュリティに関係しているのが、「暗号技術」です。暗号技術は、データや情報を特定の人だけにしか見えないようにする、いわゆる”見えない化”の技術です。私は持っていませんが、仮想通貨にも暗号技術が使われています。
世の中が便利になると、不便なことも増えてきます。全てが旨く行く魔法のような技術はまだ無いようです。