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ミリしら物理探査#23 デコンボリューション

 謎の言葉”デコンボリューション”を初めて聞く人には、語感からは全く何も想像できないと思います。音だけなら”デコレーション”に似ていますが、意味は全然違います。

 デコンボリューション(deconvolution) の意味を理解する前には、デ(de)を取ったコンボリューション(convolution)を理解する必要があります。コンボリューションは、畳み込みまたは畳み込み積分と呼ばれる数学的な操作です。コンボリューションは、関数 g を平行移動しながら関数 f に重ねて、掛算しながら足し合わせる関数gとfの二項演算です。

 弾性波探査の反射法では、震源に人工地震を使いますが、人工震源の波形は、地下の地層を横切るたびに変形を受けます。最終的に地下の地層境界から戻って来た反射波の波形は、オリジナルの波形とは異なった形をしています。これは人工地震の波形が、地層境界の影響を受けてコンボリューションされたためです。

 また、我々が喋る声も、肺からの空気振動が気管・喉・鼻でコンボリューションされた結果です。さらに、天空での地磁気脈動が地下の比抵抗分布でコンボリューションされると、地中に地電流が生じます。これも地球科学でのコンボリューションの一例です。

 反射法の場合、人工地震の波形(f)と、ジオフォン(観測点)での波形(h)は分かっています。もし、両方の波形(f & h)を利用して、地下の境界分布である応答関数(g)が分かれば、地層の分布が分かることになります。このコンボリューションの逆演算がデコンボリューションになります。コンボリューションとデコンボリューションの関係は、フーリエ変換・逆フーリエ変換やラプラス変換・逆ラプラス変換の関係に似ています。

 デコンボリューションはちょっとわかりにくい概念ですが、未知のブラックボックスである地下構造を知るためには、大変重要な概念です。

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