ぶったん四方山話#13 地雷を踏むな!
地雷には2種類あって、対戦車地雷と対人地雷に分類できます。対戦車地雷は、その名の通り戦車の爆破が目的なので、ある程度の重さ以上でないと踏んでも爆発しません。それに対して対人地雷は、敵の殺傷が目的ではなく、負傷者を増やして敵の戦闘力を削減するのが目的とされています。そのため、対人地雷を踏んだ兵士や民間人は手足が損傷しても、生き延びることが多いのです。それゆえ、対人地雷は”非人道的な兵器”と呼ばれています。
イギリスのダイアナ妃が生前、対人地雷の撲滅に力を入れていたこともあって、世界中で対人地雷の使用禁止が叫ばれた時期がありました。この頃、日本でもカンボジアの対人地雷の非人道性がクローズアップされ、地雷の探査/除去の技術開発の機運が高まったことがありました。このような技術は平和的な研究だと思われがちですが、実は”兵器を無力化する軍事技術”と見做されます。そのため、科学者の中でも「このような軍事研究はすべきではない」と、賛否が分かれる研究分野と考えられています。この辺りは、まだ答えが出ない曖昧な状況なのです。
地雷探査が軍事技術かどうかの判断はさておいて、対人地雷を除去できれば、怪我をすることもなく、地雷原を農地として有効活用できる道も開けてきます。このような目的で、九大の物理探査学研究室でも、地雷探査の研究をした時期がありました。コンセプトは「空中から非接触で地雷を探知する」というものでした。地雷センサの移動手段には”飛行船”を考えました。実際に、エジプトに行ってエジプト軍の演習地で、模擬地雷の探査実験も実施した経験があります。しかし、実験は失敗しました。少しでも風があると、飛行船を制御できませんでした。いまならドローンがあるので、ドローンを使えば簡単に成功したのでしょうが・・・。アイディアは良かったのですが、時代が我々に追い付いていませんでした。
ここまでの話は、兵器としての地雷の話ですが、比喩としての地雷が会話の中で使われることがあります。用例としては「地雷を踏む」や「地雷を踏んだ」などです。この時の「地雷を踏む」は、相手が触れてほしくなかった過去の出来事や容姿などのコンプレックス(=地雷)を躊躇いもなく話題にしたり口に出し、相手を不快な気分や激怒させたりする行為(=踏む)、という意味で使われています。
人間関係には、踏んではならない数多くの地雷があります。恐ろしいのは、現代社会の地雷は常に増殖していることです。このような”地雷”を避けるための相手との距離の取り方、意見や反論の仕方は、とても難しいコミュニケーション能力のスキルの一つです。また、誤って地雷を踏んでしまった後の、対処方法も重要なスキルになるでしょう。
地雷を踏まないためには、「この話はちょっとまずかったかな」と、常に自分の言葉を振り返ることが大事なようです。自分の発言を良いか悪いかを意識することで、弁解することもできるようになります。ただし、あまり気をつけすぎても会話は弾みません。必要以上にコミュニケーションを怖がることはないのです。地雷を踏んで、例え誤解を生じさせてしまっても、すぐに「ごめんなさい」と素直に謝ればいいのです。“地雷”を必要以上に恐れることはありません。
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