『篠栗九大の森』と物理探査
篠栗九大の森は、九州大学の敷地(九州大学福岡演習林)の西端にあり、篠栗町と九州大学が共同で整備・管理を行なっています。約17 haの森には、約50種の常緑広葉樹と約40種の落葉広葉樹が生育しています。特に、湿地の上に木が立つ水辺の森は絶景なので必見です。この水辺の森がSNSで紹介された後、ジブリ映画の『もののけ姫』に出てきそうな幻想的な風景が話題となって、観光バスなどで観光客が来るようになりました。現在は、コ〇ナのせいで最近は訪れる人が少ないので、今が水辺の森をゆっくり観察できるチャンスかもしれません。
森の中心にある蒲田池を取り囲む約2 kmの遊歩道には、町の森林の間伐材を使用した東屋やベンチが所々にあり、自然を感じながら休憩することができます。篠栗九大の森は、整備された公園ではありません。遊歩道は山道で、道には切り株や木の根もあり、滑りやすいところもあるので、散歩するときは注意が必要です。利用できるのは遊歩道と広場のみで、遊歩道を外れて樹林に入ることや、水面に近づくことはできません。
この遊歩道の下には、『鬼ヶ浦横穴墓群』と呼ばれる遺跡があります。横穴墓は、一般的には5-6世紀の頃に作られた(一般人用の)古代のお墓です。鬼ヶ浦横穴墓は、たまたま遊歩道の真下を横切るように作られていたため、横穴による遊歩道の陥没の可能性の有無を確かめたいと、篠栗町から遺跡探査の依頼がありました。
浅所の横穴墓(空洞)の探査には、地中レーダが最適なので、研究室所有の地中レーダ装置(カナダ製のNoggin Smart Cart System)を使って、地中レーダ探査を実施しました。横穴墓の場所は、遊歩道の中間付近にあって、どちらの入り口から行っても最も遠い場所にありました。調査の前日には雨が降っていたので、遊歩道はビチャビチャで、機材を運ぶのに骨が折れました。地中レーダ探査の結果、遊歩道下の横穴墓は比較的浅い場所に存在することがわかりました。
幻想的な森の風景にはそぐわない、ハイテク機器を使った物理探査を実施しました。横穴墓に埋葬された人たちも、黄泉の国でビックリしているかもしれません。
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