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地温探査

 地温勾配とは、地下深度に対する温度上昇率のことで,地下増温率とも言います。地下は一般に、地熱により深いところほど温度が高くなっています。この温度上昇率が地温勾配です。地球内部で発生する熱の大半は,ウランやトリウムなどの天然放射性元素の崩壊熱に由来しています。地熱の約45~85%は地殻に含まれる元素の放射性崩壊から発生していると考えられています。日本の地殻浅部で近くに火山などがない場所では,地温勾配は3℃/100m前後であることが知られています。しかし,地温勾配がそのような平均値から大きく外れる地域があります。例えば,深部の基盤岩が急速に沈降し,形成される盆地が地質学的に若い堆積岩で満たされるような地域では,地温勾配は1℃/100mより小さくなることがあります。一方,地熱地域と言われる地域では,地温勾配が平均値の10倍以上になることがあります。

 地球の表面から地中に向けて穴を掘るとしだいに温度(地温)が上昇することが知られていて,この地温の上昇率は平均して100mにつき3℃程度になります。しかし,地下にマグマや高温の岩石あるいは熱水といった熱異常が存在する場所では,地温が深さとともに急激に上昇することがあります。したがって,地表に近い部分の地温分布を測定することにより,地下深部の熱異常の分布を推定することが可能となるます。このような調査を地温探査といいます。このような地下深部の温度推定以外にも,地温探査は地下水や温泉の探査に利用されています。

 1m深地温探査は,その名前の通り地表から1mの深さでの地中の温度をサーミスタ温度計などで測定し,得られた温度分布から熱源や地下水脈の分布を推定する探査法です。 地表の温度は気温によって変化しますが,地下1mでは1日の気温の変化による影響をほとんど受けません。 地下水が集中的に流動している箇所,いわゆる水ミチ周辺の地温は,夏は地下水が周囲の熱を奪っていくため水ミチ周辺の地温は低くなり,冬では地下水のほうがその周囲より温度が高くなるので水ミチ周辺の地温は高くなります。この温度差を利用することで地下水の流動経路を推定することができます。しかし,地下水と周囲の温度に差が小さい春や秋には温度差の検出が難しくなるので注意が必要です。


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