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『ケルビン接続』と比抵抗法

"専門用語"は、統一されている印象を持つかもしれませんが、実はバラバラです。研究分野が異なれば、同じ概念を意味する専門用語でも異なります。例えば、物理探査の世界では弾性波や電磁波などの波が伝わることを伝播でんぱと言いますが、電気関係の学会では電磁波などでは伝搬でんぱんを使います。これには少し実用的な意味があって、”デンパ”の音を持つ同音異義語の”電波”と”伝播”が紛らわしいからです。「電波が伝播する」と言う表現は可能ですが、駄洒落みたいで耳で聞くだけでは意味が通じません。同じように、電気系の専門書では虚数単位 i の代りに j を使います。これも、電流に使われる i という記号との混同を防ぐためです。

最近、『ケルビン接続』という用語を知りました。この名称は初めて聞きましたが、実は既に知っていることでした。ケルビン接続は、英語ではKelvin connection と言い、抵抗測定における4端子法のことです。一般的に、抵抗測定には2端子法と4端子法があります。下の図を見れば一目瞭然ですが、ある物体の抵抗値を図りたい場合には、下図のような二つの方法が考えられます。

2端子法と4端子法の違いを言うと、2端子法で対象となる抵抗RSの抵抗値を測定する場合、抵抗R1およびR2(測定対象の抵抗とリード線との接触抵抗やリード線の配線抵抗)も一緒に測定してしまいます。それに対して、4端子法で抵抗RSの抵抗値を測定する場合、接触抵抗や配線抵抗は蒸しで来て、抵抗RSの抵抗値のみを測定することができます。

https://detail-infomation.com/2-and-4-terminal-method/

実は電気探査の比抵抗法では、この4端子法であるケルビン接続を利用しています。比抵抗法では、この測定対象は大地(地下)なのが、一般的な電気回路と大きく異なります。比抵抗ではケルビン接続とは言わずに、4電極配置と言います。つまり、ケルビン接続=4端子法=4電極配置 なのです。

ところで、物質の”比抵抗”にも違う呼び名があります。高校までの物理の教科書には、”抵抗率”として説明されていたものが”比抵抗”です。また比抵抗は、最近ではあまり使われませんが、”固有抵抗”とも呼ばれていました。つまり、抵抗率=比抵抗=固有抵抗 です。ちなみに抵抗の単位はΩオームですが、比抵抗の単位はΩmオームメータです。

まだまだあります。物理探査学分野の重力探査では、測定した重力から”異常重力”だけを分離するための”重力補正”を行ないますが、測地学の分野では”重力化成”と呼ばれています。専門用語がバラバラだと、同じ理系の研究者でも意思疎通ができない可能性があります。でも、統一しないんですよねぇ~。

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