世界”物探”遺産の旅#2 クルスク
磁気異常(magnetic anomaly)は地磁気異常とも呼ばれ、地球上における地磁気の局所的な異常のことを指します。地球はそれ自体が大きな磁石と考えられていますが、その大きな磁石によって生じる地磁気は一様に分布しているわけではありません。規則的な磁場中に存在する不規則な磁場が、局所的な磁気異常/地磁気異常です。
磁気異常の発生機構にはいくつかの要因がありますが、主なものは鉄などの強磁性体が地球磁場によって磁化された誘導磁化です。物理探査の一種である磁気探査は、磁気異常の観測などにより、局所的な強磁性体の存在を推定します。
ロシアの首都モスクワの南方400kmには、クルスク(Krusk)地方があります。このクルスクは、世界で一番、磁気異常が大きな地域として知られています。この地域の磁気異常の鉛直成分は常に正の磁気異常を示し、その最大値は同緯度地域の平均値の5倍にもなります。また偏角の変化も大きいので、この地域ではカーナビなどは多分使えないのではないかと思います。この磁気異常は、世界有数の鉄鉱埋蔵量を誇る地域が存在するためです。
このクルスクの磁気異常には、KMA(Krusk Magnetic Anomaly)という固有名詞が専門用語として使われています。クルスク以外にも、カナダ楯状地に属するカナダ・オンタリオ州にはテマガミ地域で大きな磁気異常が存在することが知られています。
なおタイトル画は、クルスクの鉄鉱石の露天掘りの採掘場です。