人類の進化はウイルスのお陰?
コロナウィルスがやっと終息(?)を見せ始めました。コロナウィルスやインフルエンザウイルス、この世にはウィルスが蔓延しています。ウィルスがこの世から無くなれば病気に罹らないのに、とウィルス根絶を願う人は多いと思いますが、実はそんな単純な話ではありません。
何とヒトのゲノム(遺伝情報)の約8%は、遠い祖先が感染したウイルスに由来するそうです。そうした遺伝子の一部は、受精卵の胚の初期の発達や、胎児と母親を結ぶ胎盤の形成などに重要な役割を果たしているらしい。ウィルスが生物の進化に大きな影響をもたらしていたことが、最近少しづつ分かってきました。
ウイルスの種類は膨大です。哺乳類が保有するウイルスは、少なくとも32万種に及ぶと推測されています。数の多さ以上に、ウィルスが生物に及ぼす影響も大きいと考えられています。ウイルスの多くは、人間も含め地球上の生物に害を及ぼすだけではなく、その反対にさまざまな恩恵ももたらし、生物が環境へ適応するのを助けてきたようです。
現在では、ウイルス無しには、人類は生存できなかったとさえ考えられています。例えば、ヒトを含む霊長類のゲノムに含まれるウイルス由来のDNA断片なしには、妊娠が成り立たないらしい。また、陸生動物の遺伝子に含まれるウイルス由来の別のDNA断片は、記憶にとって重要な役割を果たしています。他にも、胚の成長を助ける、免疫系の働きを調整する、がんに抵抗するなど、さまざまな役目を担うウイルス由来の遺伝子が見つかっています。
このようなウィルスの重要な働きは、解明され始めたばかりです。これまでにわかってきたことは、ウイルスが生物進化に不可欠な役割を果たしてきたことです。もし、全てのウイルスが地球上から消えたら、豊かな生物多様性も消えてしまいます。
私たちは、ウイルスの世界に生きています。ウイルスは、常に善でも、常に悪でもありません。ウィルスは、慈愛と虐待を併せ持つ矛盾した存在なのです。好悪に関係なく、ウイルスとはこれからもずっと付き合わないといけないみたいです。