ミリしら物理探査#17 誘電率
誘電率(permittivity)は、物質内で電荷とそれによって与えられる力との関係を示す係数です。簡単に言うと、電気の貯め易さを表わしたパラメータです。各物質は固有の誘電率をもち、この値は外部から電場を与えたとき物質中の原子や分子がどのように応答(誘電分極)するかによって定まります。この性質を利用して電気を貯める電子部品が、コンデンサ(キャパシタ)です。
誘電率は、地下構造を推定する物理探査では、重要なパラメータの一つです。金属鉱床の探査を得意とする強制分極法(IP法)では、鉱物中に含まれる金属粒子の誘電分極の度合い(充電率;chargeability)を測定します。この、充電率が金属鉱床を探す際の指標の一つになります。
地中レーダ探査でも、誘電率は重要です。地中レーダで使われる高周波のパルス状電磁波は、誘電率が異なる境界面で反射して地表に戻ってきます。そのため、水道管やガス管などの金属パイプなどが、地中レーダによって探査できます。その他にも、土壌と空気の間でも大きな誘電率変化があるので、地中レーダ探査は空洞探査にも有効です。
誘電率は小さな値なので、通常は「真空の誘電率」との比である、比誘電率を使います。身近なもので比誘電率が高いのは水です。水の比誘電率は、約80です。日本の土壌は水分を多く含むため、一般的には比誘電率が高めです。そのため、電磁波が地表付近で大部分が反射してしまいます。エジプトなどで考古学に地中レーダがよく使われていますが、砂漠などの乾燥地帯では土壌中の水分量は低いため、電波が地中深くまで届くためです。
埋設管や空洞の探査で使われる電磁波の周波数は400-500 MHz程度ですが、この範囲の周波数なら、(日本での)探査深度は最大でも2-3mです。地中レーダ探査は、高分解能ですが、探査深度はそんなに深くありません。ただし、エジプトなどで調査を行なえば、探査深度は倍近くになる場合もあります。
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