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”濡れ衣”の由来 春姫の濡れ衣
『チコちゃんに叱られる』を見ていたら、”濡れ衣”の語源が福岡にあることを教えてくれました。
”無実の罪を着せる/着せられる”という意味で使われる”濡れ衣”の歴史は古く、奈良時代の聖武天皇の頃にあった出来事が、その語源と言われています。『筑前國続風土記』には、「筑前に赴任した佐野近世という国司に美しい娘(春姫)がいて、その溺愛ぶりに嫉妬した近世の後妻(継母)は嫌がらせをしていた。ある日、継母が漁師に金品を渡して『娘に釣り衣を盗まれた』と訴えさせたところ、娘の部屋を覗いた近世は、春姫が濡れた釣り衣を掛けて眠っている姿を見て逆上し、怒りにまかせて娘を斬ってしまった」と記されています。
この春姫の”濡れた釣り衣”が、濡れ衣の正体です。もちろん、春姫は無実で、すべては継母の計略でした。その一年後、娘が近世の夢の中に現れ、無実を訴える歌を詠んだことから、父親の近世は、娘が無実であったことと、継母が無実の罪を着せたことを知りました。”濡れ衣”には、このような悲話が関係していました。
福岡市民でもほとんど知らないと思いますが、博多区千代三丁目の交差点そばに、春姫を祀った濡衣塚があるそうです。私も福岡に40年以上住んでいますが、全く知りませんでした。
人生を棒に振るかもしれない濡れ衣は冤罪です。検察官や裁判官の良心は信じたいですが、現実には冤罪は無くなりません。困ったものです。