私のバイブル#6 『最小二乗法による実験データの解析』
物理探査では、インバージョンという、重力や磁場などの測定データから地下構造を推定する方法があります。例えば、重力データを使うと地下の密度分布が推定でき、磁場データを使うと地下の磁化率の分布が推定できます。基本的なインバージョンには、最小二乗法が使われます。最小二乗法の基本は、計算値(理論値)と観測値との残差の二乗和が最小になるように、モデル(理論式)を決定することです。
最小二乗法の基礎は線型最小二乗法です。最小二乗法では、未知パラメータに関する連立方程式を解くのですが、線型最小二乗法では一度に答えが得られます。ただし、非線形最小二乗法では、非線形なモデルを線形化する必要があるので、初期値から開始して何度も最小二乗法を繰り返すことで、未知パラメータの最適値を求めます。
このような最小二乗法の基礎を学ぶなら、この『最小二乗法による実験データ解析』一択です。本書では、線形および非線形最小二乗法の基礎から、実際の計算アルゴリズムが丁寧に解説されています。また、線型方程式をコンピュータで解く場合のアルゴリズムも詳しく説明されています。
私がこの本を購入したのはずいぶん前でしたが、当時はまだ最小二乗法の基礎すら理解していなかったので、この本が大変役立ちました。インバージョンのプログラムを開発するときにも、フローチャートで説明されたアルゴリズムがとても役に立ちました。1冊目は、マーカーや赤ペン、それから鉛筆による書き込みが一杯です。また、何度も読み返すので、ページがヨレヨレになっています。なので、保存用に約10年前に二冊目を購入しました。
二冊目は未だに新品同様ですが、一冊目は満身創痍でボロボロです。ただしそのお陰で、どのあたりに何が書いてあるかは大体わかります。いまでも、最小二乗法の基礎理論や非線形最小二乗法のマルカート法のアルゴリズムを確認したりする場合などには、参考にしています。
私が持っているのは、二冊とも以下の古い版ですが、新しい版も出ているようです。最小二乗法を極めたい人にはお勧めの一冊です。