終活の究極形 現代版・前方後円墳型の墓地
私は仕事で遺跡探査に携わることもあるので、一般の人よりは前方後円墳に馴染みが深いと思います。これまでに、今城塚古墳、岩戸山古墳、行者塚古墳、銚子塚古墳等々、多くの前方後円墳の遺跡探査を経験しました。また、見学だけなら大きさ全国1位の仁徳天皇陵(大山古墳)や全国4位の岡山の作山古墳にも行ったことがあります。
明日は6月の最終日ですが、6月の初旬(2023/6/5)に面白いニュース記事が書かれていました。タイトルは『3100人が納骨できる「前方後円墳」型墓地に応募殺到 少子高齢化で変わる終活最新事情』でした。どうやら、この現代に前方後円墳を蘇らせたようです。
場所は福岡県新宮町の新宮霊園です。ここでは、令和4年4月から”日本初の本格的な『古墳』型永久墓”として売り出したところ、販売目標をはるかに上回り、約1年で約900人分が完売したそうです。記事では”日本初”と書かれていますが、おそらく”世界初”でしょう。”前方後円墳型墓地”という物珍しさもあるのでしょうが、この人気には少子高齢化によるお墓の後継難という問題も潜んでいるそうです。・・・なるほど。
新宮霊園の前方後円墳型墓地は、全長53m、円墳部分の直径は16.3m、高さが3.5mですから、実際の古墳なら中~小規模な前方後円墳の大きさです。この墓地の周囲には、タイトル画でわかる通り、鎮魂のための埴輪も置かれています。このお墓には、全体で3100人分の納骨ができるそうです。ただし、一人当たりの区画は骨壺が入る30㎝四方とやや手狭になっています。
価格は1区画28万円で、7万7千円の永久管理費が必要だそうです。お墓の値段の相場は知りませんが、結構リーズナブルな気がします。そのせいか、当初に予定した1200区画のうち900区画が1年で契約済みになったそうです。本物の前方後円墳に埋葬されている人は当時の王族レベルの人達ですから、庶民でも入れる”前方後円墳型墓地”は、考古学ファンには魅力的に映るのかもしれません。