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アンサング偉人伝#15 人類を月に送ったジョン・フーボルト

私が小学生だった時のアポロ11号の月面着陸は、衝撃的な出来事でした。私は小学校の教室に設置している白黒テレビで、アームストロング船長が月に降り立った映像を見たことを覚えています。当時より格段に科学技術のレベルが上がった現在でも、人類を月に立たせることは容易ではありません。

ところで、月に降り立った宇宙飛行士のアームストロングさんやコリンズさんの名前は覚えていても、それを成功に導いたNASAの研究者の名前を憶えている人はほとんどいません。

NASAは、有人月面着陸のために月軌道ランデブーという方式を採用しました。 月軌道ランデブーでは、母船となるアポロ司令船と、それに比べて小さいアポロ月着陸船の二種類の宇宙船が使われます。両船は月周回軌道に入ったのち、分離して母船が月周回軌道を巡る一方、月着陸船は月周回軌道から離脱して月表面に降下します。月での活動が終了した後、月着陸船は上昇して月周回軌道に戻り、待ち受けていた母船とランデブーし、ドッキングします。ドッキングした後は、乗組員と機材・試料等を母船に移動させた後、月着陸船を投棄し、母船だけが地球に戻ってきます。

人類初の月面着陸を成功させた月軌道ランデブー方式ですが、NASAが最初からこの方式を考えていたわけではありません。月軌道ランデブーはウクライナのロケット理論家ユーリイ・コンドラチュクによって提唱されました。NASAでこの方式を採用しようと奮闘したのが、ジョン・フーボルトでした。

人類初の挑戦ですから、その時点では宇宙船のランデブー飛行は一度も行なわれたことがありません。当初は、実用的でなく、危険性が高いと考えられていましたが、フーボルトの粘り強い説得によって、NASAの上官たちや長官であるジェームズ・ウェッブの同意を取り付けました。

フーボルトは若いエンジニアでしたが、卓越した洞察力と熱意で、その当時の技術力では月軌道ランデブー以外に方法がないことを確信していたようです。目的達成のために、無駄なものをそぎ落とす考え方は、ビジネスでのブルーオーシャン戦略と似ています。

フーボルトがいなければ、アポロ計画は頓挫していたかもしれません。フーボルトは、称賛されるべき偉人の一人でしょう。

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