ミリしら物理探査#18 アーチーの式
岩石の比抵抗(resistivity)と孔隙率(porosity)の間には密接な関係があります。一見、岩石には電気が流れないような印象を持つと思いますが、そうでもありません。岩石を顕微鏡で観察すると、微細な穴(孔隙)が空いていて、その孔隙中には水が含まれています。なお、岩石中の体積に占める孔隙の体積の割合を孔隙率と言います。一般的な岩石の孔隙率は、数%から数十%程度です。この孔隙中の水の存在によって、岩石には電気が流れます。この”岩石の比抵抗と孔隙率の関係”を、実験的に証明したのがアーチー(Archie)で、この実験式は彼の名前を冠したアーチーの式と呼ばれています。アーチーの式は、比抵抗法の原理と大きく関係していますし、物理検層と呼ばれる”坑井内で石油の住処を探す技術”の原理にもなっています。
アーチーの式の生みの親である、グスタバス・E・アーチー(1907-1978)は、ウィスコンシン大学で鉱業と電気工学の学位を取得した科学者・エンジニアで、石油産業の科学技術に大きく貢献しました。具体的には、彼はオクラホマ州の巨大なエルクシティ油田で、生産可能な地層の特定に重要な役割を果たしました。アーチーはこの仕事で、石油のペイゾーン(有望層)の特定において、坑井の物理検層が果たす役割を初めて劇的に証明したのでした。
アーチーのことを詳しく調べるまでは、てっきり彼はアメリカの有名な大学の教授だと思っていました。しかし、そうではなくシェルという石油会社の社員でした。アーチーは、非常に謙虚で飾り気のない人物でしたが、人を見る目があったようで、彼が選んだスタッフの多くは、その後、開発地質学、貯留層工学、岩石物理学の分野で、それぞれ大きな貢献をするようになっています。
彼は、地球とともに働き、地球に対する理解を深めることができる人を見出すことに、非常に優れた感覚を持っていたようです。アーチーは、油層工学の分野では、間違いなく20世紀最高の技術者でした。
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