地下水・温泉の探査
温泉や地下水の地下における賦存状態は2つに分類できます。1つは層状(多孔質層)タイプと呼ばれ,ある深度の孔隙率の高い地層にほぼ水平に拡がっているものです。もう1つは割れ目(裂か)タイプと呼ばれ,断層などの岩盤の割れ目に含まれるものです。どちらのタイプにしても,開発可能な深度に温泉や地下水が存在するかどうかや,さらにはどのように地下水・温泉が分布するかを調査する必要があります。
全ての地下探査に共通していますが,温泉・地下水の探査にも万能の方法はありません。各種の物理探査法を組み合わせて,水理地質的な情報を合わせて探査結果を解釈する必要があります。放射能探査や地温探査は,簡易的な地下水・温泉探査に使われます。より詳細な探査では,比抵抗法や人工信号源を使った電磁探査法であるCSAMT法やTEM法などが使われます。
放射能探査は,断層や岩盤の割れ目から上昇してくる地下水・温泉に含まれるラドンなどによるガンマ線を測定する方法で,その強度の空間分布から破砕帯の位置や割れ目の状態を推定します。 地温探査では,地表から1m程度の穴を堀り,深度1mでの地温をサーミスタ温度計などで測定します。この方法は,地下浅層を流れる水脈(水ミチ)によって周囲の地温が乱される現象を利用しています。
比抵抗法は,比抵抗値の違いを利用して地層の区分を行ないます。主に盆地内や山間平野,火山山麓など層状に堆積した地層の調査には垂直探査が適しています。また,水平方向に堆積構造が変化する地層や,断層構造の調査には水平探査が適しています。 CSAMT法は,探査領域から十分離れた地点に信号源を設置し,順次周波数を変えて電場と磁場を測定します。地中に透入した電磁場は,周波数により透過する深さが異なるため,周波数を変えることで異なった深さについての見掛比抵抗値が求められます。 TEM法は,地表に設置したループ状のケーブルに直流電流を流し,人工的に電磁場を生成させた後,その電流を急激に遮断することで地下に渦電流を発生させます。この渦電流の拡散する様子を地表に設置した磁力計や受信ループを使って測定し,地下の比抵抗分布を推定します。