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自分の人生

今日、久しぶりに朝礼でサイコロが当たった。
十面対くらいのサイコロに一人一人の名前が書いてあって、その日、その人がスピーチを話す。

当社の朝礼。

誰に当たるか分からないから、日頃から伝えたい事を敏感にしていたり、短い時間にまとめて話すトレーニングになったり、瞬発力や即興力なんかも鍛えられる…と信じている笑。

朝礼に出られない日も少なくないので、多分、2ヶ月ぶりくらいに当たって、咄嗟に口から出た言葉は『剱岳に登ってきました』。


剣岳


今年の10月1日、北アルプス屈指の険しい岩の山、『剱岳』に登ってきた。
山に登る人にとって、また富山県民にとって、一つの憧れでもあり、畏敬の対象でもある山。

毎年、少なからず山岳事故があり、今年も私たちが登る一週間前に、同じ歳の方が滑落して亡くなられていた。

そんな山に挑む山旅。厳しい急登、幾度も現れる鎖場、断崖の連続、一歩間違えば『死』を感じざるをえない挑戦。


カニのよこばい 一番怖かった箇所



無我夢中の中で登り、慎重に慎重を重ねて下山し終わった時の安堵感と達成感、そして感動と興奮は日常生活の中では再現出来ないなと確信して言える。

あれから2ヶ月近く経っているが、毎日の生活の中で見える立山連峰。そこに威風堂々とそびえ立つ剱岳を見るたびに、勇気をもらえる。

『剱岳を登る』と言うことの意味は、単なる困難な山を登って降りてきたと言うものじゃないことを感じる。

ただ、剱岳登山、実際は2回目。今回が初めてなわけではない。
2019年に一度、無事登頂を果たしている。

その時は友人でもあるエベレストサミッター、佐伯知彦さんと、女性初の立山ガイドである酒井恵さん夫妻という最強布陣で登った。

立山、剱岳を知り尽くしたガイド二人に何から何までサポートしてもらった登山。
「5時に出発するので、そのように準備してください!」「その岩を右脚から乗せて」「荷物は最小限にして、共同装備は持っていきますよ!」・・・・いろんなことを任せっきりでやれた登山。

今回は・・・・。佐伯知彦くんは居ない。自分の登山だ。自分の剣岳チャレンジだ。
誰かにお膳立てしてもらえることもない。指示もない。


ただひたすら、自分で考えて自分で判断して、決断をする。それの連続。結果。
無事に下山することが出来たが、感動や達成感は前回の比ではない。

ふと、人生と似ているなと思った。

色んなものが用意されていたり、守られたりしている道、わかりやすい道を歩くのは、たとえそれが厳しい道だとしても何となくうまくいく。けど、それだけでしかない。歩いて終わった。ただそれだけ。

今回の剱岳登山のように、自分の意思で決めて、自分の準備をして、自分の頭で考えて、自分の身体に頼り、歩いて、登り切る。

やり終えた時の感覚が全く違う。
自分の人生を生きるということは、こういう事だと思った。

先日読んだ養老孟司先生と漫画家ヤマザキマリさんの対談が収められた本『地球、この複雑なる惑星に暮らすこと』の中で、こんな一文があった。

素敵な本でした。


『多くの人は、人生を豊かにするために、芸術やエンタメや家族といって他者から与えられるものに縋りつつ実践する。本当に豊かに生きる人は自らの想像力と行動力で豊かにする。自分を頼ることで初めて、自らの命への賛美、尊びが発生する』

まさに、これだなと思った。

自分の剱岳登山を達成して、自分の人生を生きようと改めて思った。




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