ひでGのこだわり映画館10
この夏の映画ベスト3
第2位 ルックバック
混ざりけも無駄も省きに省いた純正な58分間。
今日もまた世の中は嫌なことばかりだったし、また明日から嫌な世の中に入っていかなくちゃいけない僕や誰かのために、また明日やって行こうと思える宝もののような58分間
タイトルの意味は「背中を見て」なのかな、「背景」みたいな意味もあるんだろうか、藤野は物語と人物を、京本は背景を描いていた。
「私が1番!」と自信満々だった藤野の漫画が京本の絵と並べて掲載された時からずっと、
人物と背景の関係は変わらなかった。
でも、人物と背景が融合して物語が生まれるのだ。物語を紡いでいる時の2人の幸せそうなカットの畳みかけ!
2人の物語が走り出す高揚感!映画を観ている高揚感を観客も共有できている素晴らしく美しいシーン。
本作はこのように、限られた時間が功を奏してというか、場面場面のテンポを絵を重ねて走っていくことで作り出しているように感じました。「絵が動くこと」まさに映画の楽しさを十分に味わせてくれる。
特に、絵という唯一の自己表現に自信を失った藤野が、自信を失わせた京本から最高の賛辞をもらい、またエネルギーを注いでもらった時の、あの藤野の歩き方、身体が自然に大きく揺れ、やがてジャンプするように踊るように走り始めたあのシーン、とても、とても、素敵でした。
2人が1人になり、夢の実現に近付いた時、「人物」と「背景」は別れていく。そして、、
その別れは、、
2人の想いが、絵になり、やがて物語となって、時を超えていく。この映画が単に友情の悲劇的な物語ではなく、それを乗り越えようとする過去と今と未来の話へと広がっていくのだ。
そう、一瞬ではあっても、創作やイメージが現実を飛び越えることがきっとある、あって欲しいと思える終盤のシーン。
エンドロールのこの作品を描いて、つなげて、広げて、最後にまとめてきた人たちの名前。エンドロールの名前たちに涙したのは、
「この世界の片隅で」以来。
エンドロールの方々がこの素晴らしい絵の一枚一枚に命を注ぎ、この素晴らしい映画に仕上げてくださったと思うと、また涙が込み上げてしまいました。