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星になる

人の最期を看取る
それも私の仕事です。

看護師になって長いこと、救命とICU(集中治療室)に勤務していた私です。
その間どれだけの死に立ちあったでしょうか。

働き盛りのサラリーマン
子供が生まれたばかりの若いパパ
日本に出稼ぎに来ているカタコトの外国人
前途洋々の大学生
子供を育て上げ第二の人生を、とそんな矢先の女性
小学生の女の子
まだまだ現役と、老齢でも難しい手術を希望した方

たくさんの人生が
終わる瞬間を目の当たりにする。
そのほとんどが、本人にとっても家族にとっても、「まさか、今」というタイミングです。
入院して、医療者と患者様が人間関係を作っていく一般病棟とは異なり、声さえ、目を開いた顔さえ知らぬまま亡くなる方もいらっしゃいます。
高度な知識と技術に裏打ちされた専門職としての職務と、人間としての感情の狭間で随分と苦しみました。

確固とした死生観を持つことが必要な職業です。
よく感じ考えた20代、それもこれも、この職業を得て多くの生と死に出会い、学ばせていただいたからと思っています。

人は理不尽に死ぬ。
それは現実として確かなことです。
人災、天災、交通事故、殺人
死ななくていい人も、死ぬ時を選べず死ぬ。
その事実を前にして
「全ての出来事には意味がある」なんてことは
残念だけれどとても言えない。
そして誰にも「約束された明日はない」
絶望的でしょうか?
そんな風に感じはしても人生に失望したりしないのは、やはりこの「生と死」に対する「畏敬」の念からなのだと思うのです。

相反するようですが、「死」には時として「救い」があります。
宗教的な事ではなく、事実「死」を迎えることがその命にとって「救い」であるという事。

現代の医学の進歩により、あまりにも無理矢理に「生かされて」いると感じる場面があります。
想像すら難しいとは思いますが、誰にとっても救いがない、そんな状態も見てきました。
ようやくその瞬間を迎えられた時、「よかったね、もう苦しくないよ」と心で思います。
死に方は、たいていの場合選べません。
何かが起こって病院に運ばれ、一旦治療が始まってしまえば、それを中断する事は困難です。

積極的安楽死についてのニュースがありましたが、私は否定はしません。
私だったら、と自分に照らし合わせることにはなんの意味もないと思うからです。
議論は必要でしょうが、それぞれが持つ死生観を誰かに押し付けるような事はあってはならないのだと思います。
(そのお話はまた機会があったら。)

数時間前、ある女性が天寿を全うされました。
看取りは数え切れない程経験していますが、長く勤めた救命やICUとは明らかに異なる感覚です。
家族が来るまでの1時間ほど、私は彼女の部屋で、ふたりで過ごしました。
最期の瞬間が近いことは全ての兆候において明らかでした。
でも、何もしない。
そばにいる、それが私に出来る最後のケアでした。
それはちっとも辛い事ではないのです。

娘さんが到着し、声をかけ見守る。
しばらくして息子さんが到着
そのわずか五分後、静かに呼吸が止まりました。
娘さんは少しの間涙を流しましたが、
家族が到着するまで頑張って待っていた事に気がつき、笑顔でした。
家族に看取られる、これはご本人にとっても、御家族にとってもすごく大切な事で
本当に間に合ってよかったと思いましたし
まさに文字通り、「待っていた」のだと思います。

尊厳死に関わったことのある御家族でしたが、「偉そうな事を言ったって、自分の肉親の事になったら迷いっぱなし」と

みなそうでしょう
私も、いざ自分の事になったら
愛する家族の事になったら
また今の思いも変わるのだと、知っています

高齢者施設において、どう死を迎えるかということは、医療施設とはまた少し違った問題も抱えています。
しかし、「その時を、静かに迎えたい」という希望は叶えられやすい場ではあるかもしれない。
歳を重ね「生ききる」ことは苦しい事でもあり、
しかしなんと幸せな事なのでしょうか。
駆けつけた家族に見守られ、静かな静かな旅立ち。
やはり私は心でこう言うのです

頑張ったね。ようやく楽になれたね、と。

死などまだ遠い未来の事のように感じる私にも、明日はどうなるかわからない
約束された未来などない
それを知っていても、忘れたように生きる時間もあるけれど
ごめんね、を明日に持ち越さないとか
つまらないケンカで、愛してるのハグをやめたりしないように
大したことは出来ないけど、いつもやさしくありたいと、そうやって生きることは忘れないようにしたいと思うのです。

辛すぎる死も時にはあるけれど
人がよりよく生きようとするのは、その先に誰にでも必ず「約束された」死があるからかもしれません。

**

これは私が考える死についてのほんの一部の思いです。語りきることは難しいですね。
永眠された方のお話には倫理上フェイクが入っています。
仮眠時間に書き上げた乱文で失礼しました。推敲未です。
帰宅したら隠すために有料記事にしようかと思います。
お別れをしたあとはなんとなく目が冴えて。でも少しの間目を閉じます。
読んで下さってありがとうございました。
おやすみなさい☆。.:*・゜

#エッセイ #看護師 #介護 #cakesコンテスト





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