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ファッションブランドの「不死身の杉本」戦略

こんにちは、本間です。

「金カム」大人気ですね。
先日劇場版「ゴールデンカムイ」も見てきました。アチャ最高でしたね。

ご存じない方のために説明すると、登場人物の中で「杉元佐一」という元陸軍軍人の男がいます。

彼は日露戦争で死の淵に追い込まれるような傷を追っても、その翌日から戦線に戻るというとんでもなタフガイでもあります。

で、彼には「俺は不死身の杉本だ〜!」って決め台詞があるのですが、
とにかく、銃で打たれようが剣で切られようが、絶対に死なないのです。

死なない=不死身

というのはファッションブランドにとっても、あらゆるビジネスにとっても
とても大事な要素です。

ベンチャー企業の生存率

日経ビジネスWeb版によると、「日本のベンチャー企業の生存率は、創業から5年後には15.0%、10年後6.3%、20年後0.3%と非常に厳しい現状」との記載があります。

つまり、創業から5年では約6.7件に1件、10年では約16件に1件、20年に至っては約333件に1件のベンチャー企業のみが生き残っていることが示されます。

私の肌感では在庫を作ってリスクを取る、ファッションブランドはもっと生存率が低い気がします。

もしあなたが、10年以上ファッションブランドをやり続けているのであれば、おそらくもう周りには当時有名だったブランドや会社もなくなっているのではないでしょうか。

逆に言えば、死ななければライバルは消えていく可能性のほうが高いので、どこかで大きなチャンスが回ってくる可能性も高いという事になります。

会社が倒産する理由はいくつかあります。
1,資金繰りの悪化
2,人手不足、後継者不足
3,能力不足

この中で一番、大きいのは1の資金繰りの悪化ではないでしょうか。

今日は、この資金繰りの悪化→活動終了
とならないための、戦略について書いていきます。

「不死身の杉本」戦略

ファッションブランドにも企業にとっても、ビジネスを永続することは極めて重要です。

遥かなる北の戦場を駆け抜けた「不死身の杉本」。彼は、どんなに深刻な傷を負っても決して倒れず、不屈の精神で困難を乗り越えた。

この伝説のような存在からヒントを得て、現代のファッションブランドや企業が直面する挑戦に立ち向かう戦略を「不死身の杉本戦略」と名付ました(笑)

企業やブランドにとっての「不死身」であること。それは、いかにして絶え間なく変化する市場の荒波を乗り越え、生き残るか、という謎かけのような挑戦に他なりません。

そして、企業やブランドにとって、不死身であるというのはどういう状態なのか。

資産がたくさんあればOK?
売上が上がり続けていたらOK?
利益が潤沢に出ていたらOK?

じつは上記の数字だけが企業の生命線ではないのです。

まず、前提として企業やブランドがなぜ死んでしまうのかというと、

倒産=資金繰りがつきる

これによりビジネスは終わりになってしまいます。
逆に言えば、資金繰りを回している間は、会社が死ぬことはありません。

資産がたくさんあっても、その資産が不動産や設備になっていて、
すぐに現金に変えられないのであれば、銀行の返済ができなくなり
終了することがあります。

売上が上がり続けていたとしても、売掛金が多すぎて
回収までに時間がかかり資金ショート。ということもあります。

利益がたくさん出たことにより、翌年にたっぷり課税されて
税金が支払えずに倒産。いわゆる黒字倒産というケースです。

だからこそ本当に必要なものは。
キャッシュです。


「え?キャッシュ
・・、現金のことですか?」

はい、現金がある限り企業やブランドは死にましぇん

そうです、現金の流れ、つまりキャッシュフローの戦略を練り、実行することが、企業やブランドを「不死身」たらしめるのです。

そして、そのキャッシュ・フローを考えるうえで、とても大事な
戦略があります。

それが

キャッシュ・コンバージョン・サイクル

です。

略して、CCCと呼ばれることもあります。
CCBでもCBDでもありません。

CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)とは何かというと、
購入した原材料が製品となり、最終的に現金に変わるまでの期間を指します。

簡単に言うと、仕入れの支払いが発生してから、売上金が入金されるまでの期間の長さです。

鋭い人は気がついたかもしれませんが、CCCは長いよりも短いほうが良いです。この期間が短ければ短いほど、企業は資金を効率的に回転させることができます。

例えば、パリコレのビジネスモデルをベースに考えてみましょう。

あるブランドがパリでコレクションを開くとして、その半年〜1年前位から生地の開発のために資金が必要になります。その他にもパターンや付属品を開発、購入してサンプル製作に入ります。
そして、パリコレでランウェイショーを行い、ここでもとてつもない広告宣伝費が先に出ていきます。
後に展示会を行い、早ければここで受注したオーダーの30〜50%をデポジットで受け取ることが出来ます。
しかし、残りの商品に関しては約半年後のシーズンスタートまでは入金を受けることが出来ません。
つまり、このモデルでは約1年半〜2年くらいをかけてCCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)を回していることになります。

もう一つの例。
かたや、あるブランドでは、サンプルを数点だけ作り、クラウドファンディングでファンから事前にお金を集めています。
ショーなどの費用もなければ、ネット上だけで受注を取り、受注の数だけ生産します。この時点で売上金は全て先に受け取り、あとは作って配送するだけです。
生産前に入金が始まるので、とてもCCCが短いことがわかります。

 これだけでも同じアパレルビジネスだとしても、CCCが全然違うことに
気がつくはずです。

そして、ランウェイショーのビジネスモデルは、そもそも大きな資金なくしては難しいことにも気がつきます。オートクチュールからプレタポルテが登場してもうすぐ80年くらいが経つので、そう考えるとずいぶんと古いビジネスモデルなのかもしれませんね。

もちろん、既存のビジネスモデルを全てクラファンにするというのは現実的に難しいこともわかります。しかし、いくつかのデザインや商品ラインナップだけでも変えることができるのであれば、企業やブランドビジネスにとって大きなインパクトになっていくはずです。

CCCを短くするのは何もクラファンだけしかないわけではありません。

CCCを劇的に変える4ステップ戦略

1,デジタル変革:オンラインで繋ぐコミュニケーション
デジタル化により、ブランドは全世界の顧客と直接的に繋がることができます。オンラインプラットフォームを通じて、製品の販売から顧客とのコミュニケーションまで、プロセスを加速させることが可能です。
あくまで自社の会員になってもらうことはCCCを短くするうえでの第一歩ですが、まずは直接コミュニケーションを取れる土台作りをします。

2,受注生産:無駄を削ぎ落とす姿勢を伝える
受注生産モデルは、無駄を極限まで減らし、顧客に合わせたカスタマイズを可能にします。これにより、在庫リスクを大幅に減少させ、CCCを短縮します。受注だからこそ何かしらのカスタムができるなど、プライス以上のインセンティブがあることが大切です。

3,サブスクリプションモデル:定期購入の魔法
定期購入サービス、サブスクリプションモデル通称サブスク、を使い特別なイベントや顧客ロイヤルティが高いコンテンツを揃えます。特別なクーポンなどもその一つですが、サブスク会員が増えれば増えるほど、キャッシュフローに対して大きな意味を持ってきます。普段は物販だけなので、なかなか考えつかないよ〜、と思ってしまうようなら、顧客に直接聞いてみるのも良いかもしれません。


4,プリペイド式チャージの革新:前払いの力学
上記3ステップまで来ているのであれば、顧客との関係はかなり良い関係が築かれています。半分裏技のようなモデルですが、プリペイド式の支払いモデルは顧客がサービスや商品を利用する前に支払うシステムです。簡単にいうとスタバの前入金やテレホンカードのようなものを販売する仕組みです。例えばブランドのポイントシステムやクーポンを販売し、前入金してもらいます無からお金を作ることができるので、キャッシュフローに与える影響は絶大です。
企業は製品の生産やサービスの提供に先立って資金を確保でき、劇的にCCCの短縮に繋がります。

柔軟性とレジリエンス:キャッシュフロー戦略の真価

ここまでできたら、商品を作る前にすでに入金されている状態なので、かなりキャッシュリッチな状態になっています。

これはただ、前入金してもらうことが大切なのではなく、キャッシュリッチであることが大切です。そして最大のメリットは、変化への対応力にあります。
チャールズ・ダーウィンが語った「一番強い種ではなく、一番賢い種でもなく、変化に最もよく対応する種が生き残る」という言葉は、企業、ブランド経営にも大いに当てはまります。

この変化に強い力は日本語では柔軟性、英語では「Flexibility(フレキシビリティ)」と呼ばれ、とにかく変化に強くあることが大事です。
さらにはピンチや逆境から立ち直る力「レジリエンス」が、企業が生き残るために必要な「不死身」の力です。

  • レジリエンス:経済的な打撃や競争の激化など、外部からの圧力に対しても、事業を持続させ、成長させる能力。キャッシュの蓄えがあれば、逆境を乗り越え、さらなる高みを目指すための基盤となります。

結論

キャッシュフローがもたらす無限の可能性

結局のところ、企業が「不死身」になるためには、キャッシュフロー戦略が鍵を握ります。サブスクリプションモデルからプリペイド式チャージまで、多様な戦略を駆使することで、キャッシュフローを最適化し、事業の「不死身」化を高めることができます。

そして、キャッシュリッチな状態を維持することで、変化への対応力、柔軟性、レジリエンスを手に入れ、どんな逆境も乗り越えることが可能になります。

企業、ブランドが未来に向けて確固たる一歩を踏み出すためには、キャッシュフローを核とした戦略を練っているのか全く無いのかでは雲泥の差を生みます。

急速に変化するファッションの世界で生き残り、さらにはその変化をリードするために、CCCの重要さが伝わってもらえれば嬉しいです。

てことで、今日はここまでです。
最後まで読んでくれてありがとうございました^^

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本間 英俊


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