
僕には実家がない
というのは
物心ついた時から20年ほど暮らしていた家。
4階建てエレベーターなし。
マンションともアパートとも言えない絶妙なバランスの建物。
それが僕にとっての「実家」だったのだけれど。
結婚するにあたって家を出たら。
残った家族たちは駅でいうと3つぐらい隣の街に引っ越してしまったのだ。
久しぶりに家族に会いにいくと
そこにあるのは『新しい実家』
僕の知らない空気が流れてて。
知っている家具たちが馴染みのない配置で並んだ場所。
「あぁ 僕にとっての実家はなくなったんだな。」
と、感じた。
同時に寂しさとか
もうあの頃に戻れない悲しさとか
色んな感情が体中を満たした。
…
時々なにかしらの用事で僕にとっての「実家」の近くに行く。
新しい入居者はいるのか
とか
そもそも解体されてないか
とか
確認して胸をなでおろす。
…
実家が大好きだった。
夏に扇風機ひとつで強い西陽と戦った僕の部屋が大好きだった。
カビだらけのくせに柔らかい光が入るお風呂場が大好きだった。
前の公園で遊んでるとおかんが洗濯物を干してるベランダが大好きだった。
でも もうそんな「実家」はないんだなって。
きっと幼少期過ごした場所と思い出がその人を作ってる。
街の風景はすごい早さで変わっていくけど。
この風景さえ僕の家族。
自分を作ってくれたこの場所に時々でいいから感謝を伝えに来たい。
心からそう 思ってる。