映画を観た記録37 2025年2月23日    ジャン・リュック・ゴダール『メイド・イン・USA』

Amazon Prime Videoでジャン・リュック・ゴダール『メイド・イン・USA』を観る。
冒頭から、映像と音響の師であるニックとサミュエルに捧ぐ、と語られ、アメリカ暗黒映画へ入るのだと告げているようである。
それにしても、ベンヘクト通り、とか、プレミンジャー通りとか、アルドリッチ刑事だとか、いかに「メイド・イン・USA」映画に耽溺しているか痛いほどわかるし、『勝手にしやがれ』は「メイド・イン・USA」映画のフィルムノワールをうまくできなかったが、そのおかげで、映画の革命とまでいわれてしまったゴダールの暗黒映画への憧憬、プログラムピクチャーへの畏敬、できれば職人監督として名を馳せたいかのようなゴダールの映画である。とはいえ、謎の不審な死を遂げたリシャール・ポ…の殺人の解明をアンナ・カリーナ演ずるポーラ・ネルソンが追いかけるという筋はあるのだが、筋通りに運ばないのである。そして、そのリシャール・ポ…の名前を出すと、ポのあとは、飛行機音や自動車音などでかき消され、名前すら観客の前に明かされず、それこそ、謎とき推理映画である。そのリシャールは、共産党の闘士だったようで、その演説の声がオープンリールテープに録音されていて流れるのである。
様々な登場人物が現れ、ドリス・ミゾグチという謎の日本人女性、ウイドマーク(リチャード・ウイドマークであることは確か)という名前の男や、デヴィッド・グーディス(アメリカのハードボイルド作家)、ニクソンと名乗る男、マクナマラと名乗る男など現れる。マクナマラへ「そんなに人を殺したいのか」というような質問をウイドマークが尋ねるのは、ベトナム戦争が行われている当時では、相当、過激なことではないか。
本作は、ゴダールが、ナレーションでボガードがディズニー映画に出る。すなわち政治映画だと語るように、暗黒映画を表層的に形作りながら政治映画を作ったといえるのである。
ちなみに、若きジャン・ピエール・レオーが出演しており、ドナルド・シーゲルという名前であり、ドン・シーゲルのことであり、そのドナルドは、ポーラに殺されるのだが、銃で撃たれてからの倒れ方が「ミザンセーヌ」としかいいようがない破天荒ぶりである。日本人女優が演じたドリス・ミゾグチも殺される。溝口健二のことであるが、溝口健二だけは「USA」ではないのだが…
他にマリアンヌ・フェイスフルが出てきて、歌うのである。
「政治映画」とはこのことか、という映画である。


いいなと思ったら応援しよう!