映画を観た記録3 2025年1月2日 ウイリアム・フリードキン『恐怖の報酬』
Amazon Prime Videoでウイリアム・フリードキン『恐怖の報酬』を観る。
『恐怖の報酬』それ自体、オリジナルはアンリ・ジョルジュ・クルーゾー作品である。
私は、ウイリアム・フリードキン作品を観て、最初にエルサレムの銃撃シーン、パリの銀行で担保がないことで銀行から追い出される男のシーン、アメリカのギャングたちがカトリック教会を襲い、寄付金をせしめ、神父をも殺し、車で逃げる際、トレーラー車にぶつかり、ギャングの車が横転し、消火水洗にぶつかり、水の滝柱ができ、急遽、消防車やパトカーが駆けつけるシーンを観て、これは、まて、『恐怖の報酬』なのか、と疑いつつ、観ていたら、エルサレムの銃撃シーンにいたパレスチナ過激派グループの若者、パリの銀行の男、ギャングの男が南米のどこかまったく汚い街、スペイン語を話していることだけが分かる独裁国ににやってきて、その独裁国で石油開発をしている工事現場が反米テロによる爆発事故がおきる。その石油事故を爆風で消火するため、少しでも揺れると爆発するニトログリセリンを運ぶための高額報酬の運転手を募集しているところで、ようやく『恐怖の報酬』と理解できた。そして、ナチス残党狩りをしている殺し屋ニーロがマルケスを殺し、マルケスが同乗するはずが、ニーロが乗り込む。ニーロは、アンリ版では、マウントはとるが、すぐ怖気つくジョーである。しかし、道中、共に死んでしまうのは共通して同じである。死の原因が違うだけである。
アンリ版『恐怖の報酬』に比べ、トラックがぼろぼろであり、しかも石油会社の施設もボロボロであり、タクシーまで壊れかかってボロボロである。とにかく、状況的には、アンリ版よりひどい状況にされている。トラック運搬は、ほぼアンリ版と同じような物語であるが、イブ・モンタン役をロイ・シャイダーが演じているが、イブ・モンタン演ずる運転手は、マリオであり、ロイ・シャイダー演ずる運転手はファン・ドミンゲスという名前で、ギャングから、アメリカから逃げるように促され、南米の独裁国へ赴く。アンリ版に比べて、ディテールが書き込まれている。そして、運搬中の道路も、橋桁や吊り橋などは同じであり、それは二台の車は切り抜ける。違いは、アンリ版は巨石が道を封鎖し、ウイリアム版は、大木が封鎖してしまい、通行ができないのを、運んでいるニトログリセリンにより爆発させることで道を作るのも同じである。そして、アンリ版は一台、ダイナマイト爆発してしまうように、ウイリアム版もダイナマイト爆発して一台が消える。違いは、ウイリアム版は、途中、テロ組織かならず者かわからないが、襲われることである、一台目の爆発は、タイヤがパンクして落下したことから、これらならず者たちが撃ち込んだことが原因である。ニーロは、これらならず者に撃たれて死んでしまう。アンリ版のジョーは事故で片足を怪我して死んでしまうのである。
ウイリアム版は、アンリ版よりもさらに状況を悪化させており、ロイ・シャイダー演ずるドミンゲスが運転するトラックは運転できなくなってしまい、最終的には、ニトログリセリンが詰まった一箱を手で運び、事故現場まで運び、作業員にニトログリセリンの箱が手に渡るのである。
とにかく、ウイリアム版は、アンリ版を大胆に改編しており、それもまた、面白い。もっとも、先にアンリ版を観ていると、冒頭のエルサレム、パリ、アメリカのシーンに戸惑う。私は戸惑った。
爆発事故で黒焦げ死体となった死体や、石油会社に怒り狂い、石油会社が死体を運んできたトラックへ民衆たちが暴行を働き、石油をかけて、火の車にしてしまうシーンは圧巻である。もっともほとんどのシーンが圧巻である。迫真性が強烈すぎる。
ウイリアム版は英語タイトルは、『sorcerer』であり、魔術師を意味する英単語であり、アンリ版の『Le Salaire de la peur』である「恐怖の報酬」ではないのであるが、日本では『恐怖の報酬』として上映された。改編しているとはいえ、それはどうみても『恐怖の報酬』である。今回観た、ウイリアム版は、4kレストアオリジナル版で、上映当時はカットされたマフィアの刺客が降りたつというバッドエンディングもついている。
特に運搬中の大雨の中、吊り橋をトラックが通行しようとするシーンは緊張感マックスである。
大傑作映画である。