デジタルレイバー ~ ヒトの代わりに苦役を担う
はじめに
はるか昔から、
ヒトには、精神活動や自己充実のための時間が必要である
と言われてきました。では、その時間はどうやって生み出せばいいのでしょうか? 今回は、その時間を生み出すのに役立つかもしれないデジタルレイバーについて記述いたします。
改訂履歴
2022.03.01:初版
2022.07.12:改訂、絵図を差し替え
2023.05.05:改訂、「おわりに」を追記
スコレー
古代ギリシャ語で「ひま」を意味するスコレーという言葉があります。(「スコーレ」と表記される場合もあります。)
スコレーは、たんなる余暇ではなく、「精神活動や自己充実にあてることの
できる積極的な意味をもった時間」「個人が自由に、主体的に使うことをゆるされた時間」のことであると言われており、
英語で「学校」を意味する"school"の語源
となっています。
その時間を作り出していたのは誰か?
古代ギリシャでは、労働から解放され、時間的なゆとりを手にいれた市民が、哲学やその他の学問について、真っ昼間から議論していたとされています。
ただし、スコレーで議論する人たちがいる一方、彼らを支えるため苦役を担う存在もおりました。古代ギリシャにおいて、それは奴隷でした。
スコレーで議論する人にとっては「余裕」が生まれましたが、奴隷には余裕がありませんでした。
奴隷となった人たちには、人権が認められていなかったから
です。そして、そのような代わりに働く存在がいるから、一部の人たちが「余裕」を手にすることができたのです。
これは、一部のヒトにあらゆる苦役を押し付ける奴隷制度が許容されていたからできたことであり、現代の日本では、もちろん奴隷精度は認められておりません。ただ、奴隷制は存在しないもの、いまだに過労に苦しむヒトはたくさん存在しています。このような人達は、時間的にも精神的にも余裕を持てず、古代ギリシャで言う「スコレー」を持つことは難しいです。
苦役を担う「デジタルレイバー」
そこで、人間に代わって知的業務を担わせる存在として、デジタルレイバーという概念が出てきました。デジタルレイバーとは「仮想知的労働者」という意味で、RPAやAIといったテクノロジーを労働力として扱う概念です。
最近では、働き方改革という流れの中で、RPAやAIを活用した仕事のやり方にも注目が集まりだしています。これらの活用は業務の効率化といったコストダウンに寄与するだけでなく、「デジタルを使って、新たな売上を立てる」ということを検討する時間に充てるリソースの確保という意味で、DXの議論にも繋がってきます。
ともかく、人間に代わって業務を担うデジタルレイバーを使い、全てのヒトに自己充実の余裕を提供するようになれば、ようやく精神活動や自己充実のための時間をもてるようになるかもしれません。
おわりに
2022年7月に初版を公開してから、たった一年で大きく状況が変換しました。ChatGPTが公開されたことです。デジタルレイバーという言葉そのものはほとんど聞かれなくなったものの、それが意味するところはあっという間に社会実装されたように感じます。上に書いたように、デジタルレイバーと呼ばれる技術を使うことで、人々は「ひま」を取り戻し、その「ひま」で新しい価値を作り出すようになるでしょう。
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