ひとり経営者タイム - 自分の頭で考えるって楽しい
前回、顧客開発リベンジ戦までのプロセスを振り返った。アドベントカレンダーも後半戦に差しかかったことだし、正直しんどかったときのことも素直に省みたい。
はじめての赤字は、怖かった
3月末に創業し、4月末にはエンジニアさんとともにプロトタイプ開発を開始できた。自社事業は7月中旬リリースにむけてチームビルディングを経験学習しながら、0→1フェーズなりのアジャイル開発を実践した。
無事に7月中旬にプロトタイプ(弊社ではα版と呼んでいる)を研修事業で使いはじめた。そして向き合うべきは顧客開発だった。顧客開発はエンジニアさんに任せることはできない。創業者自身が考えている課題やソリューションの仮説を見込み顧客に問いかけることで、仮説が正しいかどうかを検証するプロセスだから。
会社のランニングコスト、スタートアップ的にいえばバーンレート(1ヶ月あたりに消費するコスト)が増えたことによって精神的なプレッシャーが大きくなった。PMFしていない以上、損益は黒字でキープしたほうが起業家として正しいとおもった。否、シンプルに赤字が怖かった。自社事業に人的リソースを割いている以上、経営者の自分ができることはキャッシュエンジン事業を増やして会社のキャッシュフローを安定させることだと判断した。
Time or Money
キャッシュエンジン事業がスケール事業の足元を支えると思い、会社員時代から複業することで実績を積んだ。だからこそ、フリーランスとして独立できたことも事実だ。他方、キャッシュエンジン事業を作れてしまったがゆえに、時間よりもお金が大事だと言い聞かせる自分が生まれていた。
会社員だと平日の8時間を自社事業に使えない。だから独立した。だのに、平日8時間はキャッシュエンジン事業に使ってしまう状況に陥った。開発はチームで行っているから、フリーランス時代のように稼ぐことばかりに時間を使ってしまい、プロダクト開発にまったく手を付けられていない状況よりは幾分マシだった。とはいえ、到底スタートアップ起業家としての理想からはかけ離れたものだった。
スタートアップの最も貴重なリソースは「時間」
スタートアップ起業家でもいろいろな経営者のタイプがある。自分は慎重派だ。慎重派であることは今期の大きな反省点だ。正しく言えば、根が慎重派だからこそもっと勝負に出ることを強く意識すべきだった。
30歳になったばかりの凡人がキャッシュエンジン事業として稼げる売上高なんてたかが知れている。それで月次の損益が黒字になったとしても、売上高成長率に還元されてなければ、成長なんてしていない。キャッシュエンジンで手に入れていたのは、スタートアップとしてのスケールではなかった。完全に、一ヶ月ごとの心の安寧だ。
自分がやりたいことを自分以外に任せている状態は明らかにスタートアップ起業家、創業者としてやってはいけないことだ。なにか一つでもいいから自分を変える必要がある。
ひとり経営者タイムをはじめる
会社員時代も、フリーランス時代もそうだった。おカネのことを考え始めると、未来のことを考える時間を忘れてしまう。近い将来あったほうがいい社会像を実現するために新しいサービスを世の中に提供しようと決意したのに、そんなんじゃ駄目だ。
でもね、これが簡単じゃーない。おカネのことを考えちゃうっていうのは生い立ちが影響していることも少なくないとおもう。おカネがない生活や、おカネに余裕がないころに戻りたくないという気持ちが強ければ強いほど、おカネよりも時間を取るという決意を行動に変えられない。心よりも身体がビビっている感じだ。
・・・一個ずつはじめていこう。そうおもった。
お散歩タイム
ユーザーインタビューはお昼休み時間に実施していた。やっぱりクライアントワークっていうのは辛いことも多い。独立すれば守ってくれる会社ののれんも上司もいない。辛かったことやストレスが残ったままだと、自社事業に気持ちが入らなくなる。頭の中をスパッと切り替えるために、どんなに時間が遅くなってもお散歩した。そうして、23時ごろから自社事業に向き合った。
日曜日の午前中に実施する
ひとり経営者タイムは日曜日の午前中に実施した。自分自身の自社事業に向き合いたい身体の気持ちを確認するためだ。心のコンディションが良くなかったり、身体のHPがゼロになっていたら、日曜日朝早く起きてカフェに行けない。
向き合えなかった日は平日の過ごし方に課題がある。そんな日は夕方に平日の過ごし方を徹底的に反省した。向き合えた日は、メンタル健康。徹底的に未来について考えた。
インターネットは使わない
インターネットは使わなかった。使ってしまうと自分の頭で考えなくなるから。悩んだことをググってしまって会ったこともないだれかに答えを求めてしまう。
Wi-Fiや電源のあるカフェには行かなかった。ひとりで外食できないタイプなので、一人ぼっちでカフェに行くこと自体が辛いんだが、何週間か続けていくうちに慣れてきた。
他人に相談しない。自分と相談する
経営って成功者が思想を語ったり、(科学的ではないが)理論化している。成功者は自分の理論に自信がある。起業家、経営者の数だけ正解がある。だからアドバイスを求めすぎると、方向性がブレることが多かった。
すべての意見に正しいと思える側面があった。完璧ではない自分を自覚していたから素直に受け止めることを意識した。そうすると、心のどこかでは違和感があるのに、「そうですよね…そうします。」と答えてしまう。だんだん、しんどくなってきた。
そこで、日曜日は複数の選択肢からひとつに決める時間にした。たくさんの意見、王道に対して、相反する、反対側から自分の意見をぶつけるように紙のノートに方法論やアイデアを書きなぐった。
ユーザーインタビューを既存の方法論でいえば、返信が来なくてもFacebookやTwitterでDMを何百通も送ることなどが挙げられる。でも、違和感があった。(なんかやりたくないっていうのもあった)
自分自身はユーザーインタビューで重要なのはインタビュー数よりもフィードバック回数(同じ人に違う仮説を何度もぶつけられる関係性をつくること)だとおもった。だから、見込み顧客を採用するという方法を考えて実施した。
自分の頭で考えるって楽しい
ひとり経営者タイムの効果は絶大だった。精神衛生が改善した。自分の頭で考えてやってみるっていうのは何よりも楽しい。違っていても楽しいと思えるから継続性がある。
次のスタートアップの経営理論を作っている感もあった。日本の起業状況に合わせたリーンスタートアップ理論の応用をまとめている感じがよかった。俺はもっとこういう話をスタートアップ起業家と話せたら嬉しいなっておもう。
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